日本経営管理教育協会がみる中国 第693回 ――磯山隆志

初めて中国の脅威を明記

 9月28日、日本政府は新たなサイバーセキュリティ戦略を閣議決定した。サイバーセキュリティ戦略とは、2015年に完全施行されたサイバーセキュリティ基本法第12条に基づき定められるもので、今後3年間のサイバーセキュリティに係る諸施策の目標および実施方針を示す基本的な計画である。

 新たなサイバーセキュリティ戦略では、経済社会の活力の向上及び持続的発展、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現、国際社会の平和及び安定並びに我が国の安全保障に寄与することを目的として施策を推進するとしている。例えば、経済社会の活力の向上及び持続的発展ではDX(デジタルトランスフォーメーション)とサイバーセキュリティの同時推進、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現では新たに発足したデジタル庁を司令塔としてデジタル改革と一体でサイバーセキュリティを確保するとしている。

 そして、国際社会の平和及び安定並びに我が国の安全保障に寄与では、サイバー能力を増強し、情報窃取等を企図したサイバー攻撃を行っているとみられるとして、初めて中国・ロシア・北朝鮮を名指しした。その上で安全保障の取り組み強化として、中国・ロシア・北朝鮮の脅威を踏まえた外交・安全保障上のサイバー分野の優先度向上や防衛省・自衛隊のサイバー防衛能力の抜本的強化、アメリカやオーストラリア、インド、ASEANなどとの国際的な協力や連携を図るとしている。

急がれる脅威への対応

 今回のサイバーセキュリティ戦略に対し、中国は「脅威をあおることに反対する」として反発している。サイバー攻撃に関する中国の脅威については、これまでも繰り返し指摘されてきた。2019年には日本政府が、中国が関与するといわれている「APT10」というサイバー攻撃グループへの注意を呼び掛けたことがあった。

 今年に入ってからも、4月にJAXA(宇宙航空研究開発機構)をはじめとする約200もの日本国内の企業や研究機関にサイバー攻撃を行ったとして、警視庁が中国共産党員の男性を書類送検したとの報道があった。また、7月にはマイクロソフトのメールシステムへのサイバー攻撃に対し、実行犯が中国国家安全省とつながりがあるとして、アメリカをはじめとする日本やEU、NATOの同盟国が中国政府を非難する声明を出した。この声明に対しても中国政府は反発している。

 今後、経済的にも安全保障においてもサイバー攻撃の影響が大きくなるとともに、サイバーセキュリティの重要性も高まってゆくだろう。それにともない対策も急務となっている。中国政府に自制を求めても期待できない中で、サイバー攻撃が止むことも考えにくい。自民党の総裁選で高市候補がサイバーセキュリティ庁の設置に言及したとされるが、国家が関与した可能性のある攻撃に対抗するにはこのような議論も必要になるだろう。いずれにしても各国との連携や国家的な取り組みがさらに推進されることを期待したい。(写真は、国家的な対応が必要。提供:日本経営管理教育協会)