日本経営管理教育協会が見る中国 第648回 ――下崎寛

 日本人が使う「すいません」という言葉は、日本人の文化慣習を一言で表した言葉である。

 私の事務所でも10年前から縁があって中国人の顧問先が増え、中国人の従業員も10名程度いる。日本人のスタッフもおり、一緒に仕事をすることとなるが、日本人と中国人との従業員のコミュニケーションが難しく、結果的に中国人従業員を分室して業務をすることとなった。

 その原因としては、「すいません」の使い方である。日常業務では、日本人は、「すいません」を使い上手に仲間とコミュニケーションを取るが、中国人においては、「すいません」を使う文化慣習がなく、上手に使い分けができない。例えば、仕事上注意すると一言「すいません」が言えず、何も言わないと日本人においては反抗的な態度と映り、気分がまずくなる。また、ミスした場合も、「すいません」と言えばことが済むのに、言わないで言い訳をすると中国人は「自分の非を認めない」人間だなどと軽蔑される。

 そのようなことが続くと中国人は平気であるが、日本人はストレスを感じ、そのような人と付き合ったことがない日本人がまいってしまう現実がある。

 ところで、私の顧問先で中国人の人材派遣を専門に行っていた社長がいる。その社長においても、同じ悩みがあり、そこで「すいません」の使い方について本を出しており、宣伝めいて恐縮だが日本人の必読の書である。(井上一幸著「『すいません』が言えない中国人、『すいません』が教えられない日本人」(健康ジャーナル社))

 そこでは、日本人の「すいません」の意味は、感謝の「すいません」、依頼の「すいません」、思いやりの「すいません」とがあるという。その言葉は、島国日本の長年培った文化慣習であり、起源は聖徳太子の「和をもって尊しとなす」の精神にある。そして、「すいません」が日本人のDNAにその精神がしみ込まれており、日本人は慣習的に「すいません」の使い方が上手に使えるが、中国人等の外国人においては、その意味は分からないものであり、日本人が丁寧に教える必要がある。

 中国人は、よく「謝らない」とか「言い訳をして、自分の非を認めない」とか日本人は言うが、根本は謝る文化慣習がないのである。

 最近のコロナ禍においても同様だが、誰が見ても中国に非があるのに、どうしても「自分の非を認めない」のが中国人である。それは、日本人的な「すいません」精神がないわけである。すなわち、謝罪する「思いやり」の慣習がなく、「自分は悪くないと言い訳をする」のである。

 私は、中国人は大好きである。そのアグレッシブ精神については尊敬をしている。

 日本人は、中国人に対して「すいません」の精神を教える必要があるが、残念ながら、日中の歴史、政治問題があり難しいだろう。(写真は、税理士事務所。提供:日本経営管理教育協会)