日本経営管理教育協会が見る中国 第646回 ――楠田貴康

 中小企業庁が、中小企業の動向をまとめた「中小企業白書・小規模企業白書(以下、白書)」の2020年版が今年も発表された。1964年3月より発行され、今年で57回目(小規模企業白書は2015年から6回目)となる。今年度より「中小企業白書」「小規模企業白書」取りまとめて閣議決定された。中小企業に期待される「役割・機能」や、それぞれが生み出す「価値」に注目し、様々な取り組みについて調査・分析されている。

(1)経営者の高齢化と後継者不足

 総論では、「企業の新陳代謝が進む一方で、生産性の高い企業の廃業も」がはじめに述べられている。昨今の中小企業の動向としては「後継者不足」と「多様化」の2つのポイントが挙げられてきているが、具体的な分析として、廃業した企業の労働生産性の上位10%の平均値が、存続した企業の上位25%の平均値よりも高いというデータが確認された。生産性が高く業績が低迷していないにも関わらず、廃業している企業が一定数いるということが示された。

 実際に廃業した企業の直前期の業績を見ると、約6割の企業が当期純利益黒字という結果となっている。これは、後継者不在や会社を継続させたいが相手先がいないことで解散になっているなど、もったいないことが起きている。M&Aのテーブルに乗せることなど、高齢化に向けて企業の価値を示す事業性の評価や比較的低コストで中小企業でもM&Aが行えるオンラインのM&Aマッチングサービスの整備などを早急に進めていき、うまく引き継がれることをまじめに考えなければならない時期にきている。

(2)付加価値の増大

 企業の付加価値(粗利)を「企業から新たに付け加えた価値(=売上高から外部調達費をひいたもの)」と定義し、いかに付加価値を増大させていくかは重要な指標である。それは、生み出された付加価値が「人件費」「その他費用」「利益」に分配され、新たな付加価値を作るための起点となるからである。

 日本は今、「働き方改革」が急速に進められていることもあり、労働分配率(人件費/付加価値額:付加価値に占める人件費の割合)が高止まりの状態が続いている。特に、大企業では5割程度であるが、中小企業では8割を占めている。これは、利益出して研究開発展開したいができていないということになる。「働き方改革」により、生産性の向上を図り一人当たり付加価額値を高めていくことがこれからも更に求められる重要な課題である。

(3)これからの中小企業

 「事業性の評価」や「付加価値額」を向上させることは企業価値を高めることになる。そのために社外の技術やノウハウを活用することが、中小企業の可能性を広げ、新しい技術開発やサービス創出のきっかけとなる。特に異業種の企業や大学と連携している企業は生産性が大きく向上していることがデータからも分かっている。

 また、白書では調査した約半数の企業が、製品やサービスの優位性を「価格に十分に反映されていない」というデータがある。つまり、多くの企業が「この製品はもっと高く売れてもいいのに」と思いながら販売している。中小企業が価格競争から脱却し、獲得できる付加価値額を増やしていくためには、優位性を顧客に発信し価格を上げても顧客との関係を良好に保つことが重要だと言える。

 中小企業が企業価値を高めていくための起点は「異業種企業、もしくは大学とオープンイノベーションをして事業を始め、その価値をしっかり伝える」ことだと考えている。そのなかで、一番のボトルネックとなるのはオープンイノベーションではないだろうか。勝手の違う異業種や大学との連携はハードルが高いと感じてしまうものである。そこに自社の事業性をしっかりと評価することができることが重要であり、そのことで自分の持つ価値を明確に伝えることができる。製品・サービスへの値決めに関しても「この製品はこの価格でも売れる」という考え方も生まれてくるのではないだろうか。

 今こそ求められることは、「事業性評価が適切に行われつつ、多様な事業活動に挑戦すること」であると考えている。(写真は、事業性評価_データ分析。提供:日本経営管理教育協会)