現在の日本を形容するときに「低欲望社会」という表現が使われることがある。中国メディアのテンセントは7日付の記事で、現在中国の清華大学で准教授を務める陳朝輝氏の見解を紹介している。陳氏は「彼らは身の丈にあった地道な人生を選ぼうとしているに過ぎない」と述べている。どういう意味か。陳氏から見れば「今の日本の若者は本物志向で、自分らしい生き方を追求したいだけ」と述べている。

 陳氏は、まず自身が熊本のある大学で中国語を教えていた時のエピソードを紹介した。中国語のクラスにあまりやる気のない若者がいた。専攻の中国語の勉強にも、あまりやる気を見せない彼にしびれをきらした陳氏は「将来は一体何がしたいの」と聞いた。学生は「将来は地元でバスの運転手がしたい」と答えた。陳氏はその答えにややがっかりし、「中国語を使ってビジネスを興そうとか、もっと高い理想がないのか」と意外に感じたようだ。

 陳氏は、その学生にバスの運転手になりたい理由を尋ねると、彼は「自分は故郷の街が大好きで、その街で季節の移ろいを感じながら年を取れるなんて最高だ。最近は中国人観光客も増えてきたから、バスの運転手をしていれば中国語を使う機会も必ずある」と答えた。陳氏はその答えに「地に足のついた、実直な人生計画に愕然とした。自分の理想と、現実をしっかり見据え、“等身大の飾らない自分”でいようとしているのだ」と述べている。

 さらに、陳氏は別のエピソードを紹介している。陳氏が東大に通っているころ、東大の近くに、あまり流行っていない理髪店に通っていた。陳氏は「このお店じゃあまり儲からないだろうから、上野とかもっと繁華な場所で商売をしてみては」と聞いてみた。店主は「自分は子どものころからずっと野球をしていて、今も地元の野球チームと一緒に練習をしている。自分はこの生活を大切にしているので、たとえ儲かったとしても別の場所で暮らしたいとは思わない」と言った。陳氏は「そういう生き方を心からうらやましく思った。自分のしたいことを大切にし、自分らしい生き方をする。これこそまさに人間の願いだ」と述べている。

 結論として記事は「現在の日本は一見するとたしかに競争心や向上心がないようにも見えるかもしれない。しかし、別の角度から見ると、本物志向で、自分らしい豊かな人生を送ろうとしていることの表れなのだ」とまとめている。そのうえで、現在の中国のように、競争社会の中ですり減らされながら生きていくことが、本当に理想的な姿なのだろうか、とまとめている。(編集:時田瑞樹)(イメージ写真提供:123RF)