日本経営管理教育協会が見る中国 第644回 ――水野隆張

◆中国の新薬開発力が飛躍的に高まっている

 新型コロナウイルス感染が拡大する中で、米国と中国の対立がさらに深まっている。その背景には最初に新型コロナ・ワクチンに成功した国が世界に先駆けて、その国の経済と世界的な影響力を回復するだろうという見方が強まっておりワクチン開発の重要性が高まっているからである。

 ひと昔前ならば中国が米国を凌いでワクチン開発に先行することは考えられなかったが過去10年間で中国の新薬開発力は飛躍的に高まっているようだ。世界に先駆けて中国がCOVID-19のワクチン開発に成功する可能性も否定できないといわれている。

 中国企業がワクチンを開発・供給できれば、自国のためだけでなく、公衆衛生上、感染症が大きな課題であるアジアアフリカなどで存在感を増すことにつながるという、中国政府の戦略があるということであろう。

◆中国はコロナ封じ込めでもワクチン開発でも日米欧を圧倒している

 新型コロナウイルスの発生源となった中国の感染者は9万9788人、死者は1170人で最新の1日当たりの新規感染者は7日平均で15人となっており、死者はゼロの状態が続いている。これに対して世界は第2波の拡大に怯え、感染者は約4447万人に上り死者は117万人と拡大を続けている。コロナ封じ込めでもワクチン開発でも中国は日米欧を圧倒していると言えるだろう。

◆米国はWHO脱退を通告

 一方、「アメリカ第一主義」を叫ぶトランプ大統領は貿易赤字や国外に駐留する米軍の経費取り立てに熱心で、他国を助ける考えは全くなく、それどころか世界保健機構(WHO)は中国寄りと糾弾して拠出金を取り止めWHO脱退を通告している。米中逆転の兆しがみえてきた。

 トランプ大統領が「ワクチン・ナショナリズム」を強調する中で、中国の習近平国家主席はコロナ・ワクチンについて「世界の公共財」と宣言、インフラ経済圏構想「一帯一路」に乗せて「健康シルクロード」を広げる考えを示している。更に中国はマレーシア、タイ、カンボジア、ラオス、フィリッピン、インドンエシア、UAE,セルビア、パキスタン、バングラディシュ、ブラジルなどアフリカ、南米、カリブ湾、中東、など世界の少なくとも16カ国で「ワクチン外交」を展開している。

 アメリカ大統領選挙は終盤を迎えているが、このような状況が続けばアメリカの凋落と中国の台頭が加速するかもしれないと思わざるを得ない。(写真は、北京首都国際空港のモニュメント。提供:日本経営管理教育協会)