日本経営管理教育協会が見る中国 第635回 ――永野剛

 本来であれば今年4月に習近平国家主席の国賓での来日だったが、誠に残念ながら延期となった。今後、再び来日機運を高める際に一つ懸念点がある。それは香港情勢である。一部若年層の香港人が民主主義を求めて雨傘運動や、昨年から続く大規模デモなどを散発的に実施していることが原因となり、安全確保のため中国政府によって香港国家安全法が施行されることとなった。日本人の多くは「香港の民主主義が無くなる」などとマスメディアの影響を存分に受け、中国大陸の手法について間違った疑問を持つ者も多いのではないかと思うので、改めて当然の事実を説明したい。

 まず歴史的視点を捉える必要がある。18世紀から19世紀にかけて欧米列強が植民地化を進め、イギリスは2回アヘン戦争を当時の清朝に仕掛け、1842年の南京条約、1860年の北京条約で香港全地域を植民地として奪い取った。イギリス本国では禁止されているアヘンを中国に持ち込み、巨額の利益を得た歴史がある。まずはイギリスがその蛮行を中国に謝罪すべきであるが、1997年の香港返還まで植民地支配は続いた。このような歴史的背景は完全に理解しておかなければならない。

 次に1国2制度であるが、あくまでも1国である。97年の香港返還以降、社会主義中国の傘の下、香港は存在することになった。国では無いので完全な自由、完全な自治などあろうはずがない。もしそうだとしたらそれは独立国ということになる。社会主義の大陸と特殊な地域である香港が上手く関係していくことが2制度の意味だ。

 生まれた時から仮想民主主義の世界に身を置いている学生たちが中心となり、民主化要求デモが各地で行われた。映像を見てどういう教育を子供達や学生に香港行政はしていたのか甚だ疑問である。自分たちの置かれている状況を理解できず、アヘンを持ち込み99年間も植民地支配をした某国の国旗を掲げ、警察と必死の攻防をしている映像からは、やはり米国や英国の画策があるのでは無いかとさえ思ってしまう。彼らは墓穴を掘ったのだ。暴力的なデモさえなければ、中国政府も強硬な姿勢は取らなかったはずだ。

 翻って日本人はこの問題に対し、マスコミ報道を鵜呑みにしないのは当然だが、曖昧な返答をするべきでもない。与党の一部では習近平国家主席の国賓来日について批判的な声もあると聞く。せっかくここ数年関係良好な日本と中国の二国間関係において、間違った人たちの行動によってまた後戻りすることは避けなければならない。一人一人メディアリテラシーを持つべき時は今である。内政不干渉があるべきであり、民主主義がどの国にとっても正しい訳ではないと知るべきである。(写真は、中環(セントラル)の様子。提供:日本経営管理教育協会)