日本経営管理教育協会が見る中国 第634回 ――下﨑寛

 現在、世界のコロナ禍の影響を国別に考えるとヨーロッパ、北米、中南米に感染者が多く、アジアの感染者が相対的に少ない。

 アジアでは、日本をはじめ、中国、韓国、台湾、ベトナム、タイ等の仏教国が中心となっており、人と人の濃密な接触する習慣はなく、また、手を洗うことを生活面で慣習となっていることもある。一方、ヨーロッパ、北米、中南米では、人と人の接触を好む民族であり、マスクをすることや、手洗いを実行することが習慣化されていないことの影響があるのではないだろうか。

 その生活習慣の背景には、宗教の違いがあるのではないかと推察される。

 ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は、いずれも聖書の聖典があり、神との契約が出発点となっている。すなわち、ユダヤ教においては、旧約聖書においてエホバの神の戒律に忠実に従うことが厳格化されており、キリスト教は、ユダヤ教と異なり、イエスを救世主とし、キリストの教えを守ることにより神に召され天国に行けることが約束されている。イスラム教においてもマホメットを教祖としてアラーの神を唯一絶対の神として、コーランの聖典を遵守することにより、人々は天国に行けることとなっている。いずれも一神教であり、神との契約により聖典を遵守することで人々は救われるという契約宗教といわれている。

 一方、仏教においては、インドにおけるお釈迦様が開祖であるが、35歳で悟りの境地に達し、亡くなる80歳まで布教していた。仏教は、インドを出発点とし、東南アジアに広まり、日本においては中国から伝わってきた。そこでは、経典はなく、お釈迦様の死後、各宗派の開祖が独自の経典を作成している。仏教には、神との契約ではなく修行により悟りを開いた僧侶が仏様となって民衆を救うこととしている。そこでは、念仏を唱えることにより、人々は死後現生の娑婆から極楽である彼岸行くことができるとされている。

 ところで、日本においては、日本独特の神道という宗教がある。

 神道とは、確定した教祖や聖典もなく、人物以外に石、物等の森羅万象が神様としてお祭りする神社がある。これは地縁・血縁などで結ばれた共同体であり、基本的には、その地域の日本人はだれでも氏子になることができるが、外国人は氏子になることはできないという民族信仰といえる宗教がある。

 このように、アジアには、アメリカ・ヨーロッパ・中南米と異なり、仏教を中心とする宗教の慣習が基本にあるのであろう。すなわち、神に帰依するのではなく、自己修行の心得をもって物事に対処する習慣があり、コロナ禍においても苦難に耐えることのできる精神的な免疫をもっているのではないだろうか。

 日本の終戦記念日において考えるに、世界には、いろいろな立派な宗教があり平和を尊重することとしているのであろうが、何で戦争が起きるのであろうか。人間とは摩訶不思議なものである。(写真は、日本の寺院。提供:日本経営管理教育協会)