第69回ベルリン国際映画祭で受賞された中国映画「在りし日の歌」、中国語原題「地久天長」。メガホンをとったのは、王小帥(ワン・シャオシュアイ)監督。日本での上映作品数はそれほど多くはありませんが、中国では“中国第6世代”のひとりとして、ジャ・ジャンクーに匹敵するほどの知名度を誇ります。

 この作品は、1980年代から2000年代の激動の中国を背景に、中国の地方都市で幸せに暮らしていた国有企業の工場に勤めるヤオジュンとリーユン夫婦が大切なひとり息子シンシンを事故で亡くし、悲しみに暮れるふたりは住み慣れた故郷を捨て、親しい友人とも距離を置き、誰も自分たちのことを知らない町へと移り住む40年間の喜びと悲しみ、出会いと別れを繰り返しながらも共に生きていく夫婦の姿を描いています。

 私も、ちょうど一人っ子政策の世代です。私は子供だったので、当時の記憶はあまりありませんが、私の父と母は、主人公と同じ時代を生きていたので、その時代にこれだけ大きなことが起きていたんだなと、ドキュメンタリー映画を見ているような気持ちでした。

 1980年代から今まで、一人っ子政策は中国のあらゆる家族に多大な影響を与えてきました。劇中では、食糧不足などの理由で人口増加を防ぐため、一人っ子政策が打ち出され、それに従わなかった場合は悪人扱いされていました。かなり倫理的に議論が起こるショッキングな内容もありました。

 当時一人しか子供を持てないない親の心情を今の私には到底理解できない苦悩があったことが映画を通して痛感し、親の子供への愛情の深さ、無性の愛を映画を通して分かったような気がします。また、映画の中では、唯一の子供を無くした夫婦がお互いのために生きる姿が描かれていて、それは美化ではなく、時代に翻弄されながら生きてきた夫婦だからこそに生まれた美しい愛の形。

 劇中の40年間(80年代、90年代、00年代、10年代)における中国の変化は、社会情勢がかなり激しく変わり、人々は常に早いスピードの変化に従い生きてきました。映像を通して、この40年間の中国の変化も分かりやすく描かれています。団地にあった共有の電話から、一人一台のスマホへ。改革開放後に建てられた団地から高層マンションへ。経済発展による恩恵と社会問題が常に隣合わせの中国を、ミクロの視点で同時に見ることが作品です。

 本作のテーマ曲「友誼地久天長」は中国では誰もが知っている曲です。「友情は天地の如く永久に変わらない」という意味です。訳は友情になっていますが、これは全ての情だと思います。時代の変化が大きい中国で、人々の情は変わらないというメッセージが込められていると思います。(写真は、筆者であるアンジー・リーさん。上海出身、タレント・ラジオDJとして活動中)