日本経営管理教育協会が見る中国 第625回 ――楠田貴康

(1)緊急事態宣言解除後のテレワーク

 新型コロナ感染防止による国内企業側の対策として急激に在宅勤務が浸透した。5月末の緊急事態宣言の全国解除を機に、各企業のテレワークは続くのか、それとも平時の通勤体制に戻りつつあるのか確認してみた。パーソル総合研究所(東京・千代田)が5月末から6月始めにかけて正社員に「現在の働き方」についてアンケートしたところ、全国のテレワーク実施率は25.7%と4月中旬調査より2.2ポイント低下した。加えて、5月末に比べて6月に入ってからの回答の方が、実施率が顕著に下がる結果となった。5月末の緊急事態宣言の解除は、「通勤の復活」への影響を徐々に与えていると言えそうだ。

 一方、「テレワーク実施率○○%」などとしても、数字の多くが平均値だ。都道府県や業種、職種によって実施率にはかなり大きい幅がある。例えば、都道府県別のテレワーク4月の実施率は、東京(49.1%)・神奈川(42.7%)・千葉(38.0%)・埼玉(34,2%)と東京近県が上位を占めた。テレワーク実施率が少ない県は、山口(4.7%)・岩手・秋田・長崎(ともに6.2%)と地方の県が確認される。満員電車による通勤がないことの違いなどがある。

 また、職種・業種間のテレワーク実施率でも「二極化」している。例えばコンサルタント、経営企画、IT技術職といった職種は4月中旬よりも10ポイント前後増加している。さらに、例えば経営企画の実施率が4月時点で既に61.4%と、これらは「もともと高い比率が宣言解除後も高まっている」業種と言える。

 逆に販売職、理美容師、医療系専門職などは、4月時点で10%ないし1桁%程度だった実施率が、今回さらに半減する結果となった。テレワークに向いた業務はさらに拡大・定着の方向へ、対面を必須とする業務は緊急事態宣言の解除でますます「平常モード」化する傾向にあるとみられる。非対面ビジネスとしてどのように生かしていくかは今後の課題だ。

 人口約14億人の中国では既に3億人がテレワークを実施したといわれる。職場ではテレビ会議が急増したが、多くがテレビ会議システムを利用したため回線がつながりにくかったり、音質が低下したりするなどの混乱も発生し、仕事の効率が低いなどの課題も浮き彫りになった。また、中国では在宅勤務の際、従業員の勤務態度を過度に監視する企業が多く、社員のストレスを増大させているという。例えば、ある企業では毎朝9時にテレビ会議を実施し「寝間着の着用は罰金」「呼び掛けたらすぐ返答」などの規則を設けているようだ。インフラによる業務効率や勤務管理面での課題がある。

(2)テレワークのこれから

 コロナ禍によりあらゆる業態の「対面型サービス」が苦境に陥り、サービスの提供方法や提供する価値について、再考を迫られることが増えた。その手段のひとつとしてテレワークの活用が期待できる。

 近年、国内を襲った災害には1995年阪神淡路大震災、2008年リーマンショック、2011年東日本大震災がある。リーマンショックは、資産価格の暴落での信用収縮による金融危機が起った。これには金融政策を施し経済を10年通して立て直してきた。また、震災は火災や津波で膨大な死傷者が発生したうえに、建物が崩壊するなどハード面が破壊される甚大な被害が起きた。これを復興需要として公共投資を中心に10年の歳月をかけて経済を再生させてきた。いずれも経済政策により再生を図ってきた。

 今回のコロナ禍はまだ始まったばかりで終わりが見えていない。信用収縮やハード面の破壊ではなくソフト面での破壊が進んでいる。すなわち企業からすると、ソフトが生み出す売上がなくなり、そこに固定費のみを負っているということだ。

 国内ではテレワークでの継続業務を希望する人は約7割もいる。一方、テレワークを経験した人の「続けてほしい」意向は高まっているようだ。テレワーク実施中の正社員のうち「継続を希望」と答えた割合は69.4%となり、4月より16.2ポイントも上昇した。特に若年層や女性の間で高く、20代女性の継続希望率は79.3%にも上った。

 コロナ感染の第2波も警戒される昨今。本来、働き方改革による業務効率化の目玉でもあったテレワークだが、一定の定着を図っていくことで「ソフトな新しい製品やサービスを生み出すこと」を果たし、企業社会の自律を目指すことが必要だ。今後の動向が注目される。(写真は、テレワークによる仕事の様子。提供:日本経営管理教育協会)