日本経営管理教育協会が見る中国 第623回 ――水野隆張

◆米国で深まる社会分断

 白人警官による米ミネソタ州の黒人暴行死事件が引き金となった全米の抗議デモは、公民権運動の旗手、キング牧師の1968年の暗殺時以来の騒乱に発展している。香港デモへの統制強化を進める中国への制裁を表明したトランプ政権だが、自国のデモ鎮圧には武力行使も辞さない姿勢も見せている。

 中国外務省の趙立堅副報道局長は1日の記者会見で「どうして米国は香港警察を非難し、一方で自国の抗議活動への参加者を銃で脅かすのか。典型的な二重基準だ」と米国を皮肉っている。中国は「一国二制度」を骨抜きにする香港国家安全法の制定を一気に進め、トランプ大統領が進める対中強硬路線に真っ向から対抗する構えを見せている。

 米国で燃え盛るデモの光景は、一党支配と強権的に国民を抑え込む中国体制の優位を再認識させることになるかもしれない。それにしてもコロナウィルスに感染したアメリカ人は170万人を超えその死者数では、朝鮮戦争とベトナム戦争戦死者を合計した水準にまで近くなっている。トランプ大統領はこのウイルスとの闘いを「見えない敵との戦争」と特徴付け、その被害は日本軍によるパールハーバー攻撃よりも、イスラム過激派による九・一一同時多発テロよりも酷い、という苦渋の言葉を述べるに至っている。国家としても国民としても、信じられないほどの苦痛で悲惨な屈辱の事態に襲われたのである。

◆米中関係対立の激化

 アメリカ側のコロナウイルスに対する基本的認識は、習近平政権は武漢での新型コロナウイルス感染を知りながら、その存在をまず隠し、さらに虚偽の情報を流し、事実を告げようとした現地の医療関係者たちに懲罰を加え、沈黙させた――という骨子であった。

 更に中国政府は其の後アメリカに対して挑発的な態度を取り始めた。「ウイルス感染は米軍の犯行だ」と主張し、「アメリカの力はもう地に落ちた」などのプロパガンダを連日発信するに至ったのである。これに対してアメリカは中国政府の財政面での責任追及としてアメリカが受けた損害への賠償請求を進め、アメリカ議会や民間では、すでに中国当局への訴訟の動きが始まっておりその金額は天文学的金額に達している。

 更には中国政府の不当不透明な動きに同調した世界保険機関(WHO)の責任を問い、拠出金不払いやテドロス事務局長をボイコットすることによって状況改善を図る。中国との経済関与を大幅に減らすための具体的措置として、アメリカ企業の対中サプライチェーンの削減や中国製品への依存の減少、などを進めている。

◆米中の対立で国際統治を機能不全に追いやる事態は避けるべきであろう

 トランプ大統領は最近、公開の場で次のような発言をしている「コロナウイルス感染は、そもそもアメリカ国内では決して起きるべきではなかった。発生源である中国の内部で阻止できたはずなのだ。だが、阻止されなかった。そのことに私は強い怒りを覚える。ウイルスとの闘いはアメリカにとって戦争であり、相手は見えない敵なのだ。」

 更に、「ウイルス問題での中国への対応にはいろいろな道があるが、対中関係をすべて断交することもできる。ウイルスの起源についてはアメリカが調査団を送ると伝えたら、中国は断った。中国の感染拡大の原因は、愚かさか、無能か、あるいは故意か、自分たちは分かっているはずだ。」とまで言っている。

 しかしながら2008年のリーマン・ショック後を上回る世界的な不況も長期化の懸念が残っており、米中の対立で国際統治を機能不全に追いやる事態は、どうしても避けなければならないであろう。日欧の役割も問われる事になろう。願わくば米中超大国が呼びかけて世界首脳会議の枠組みの立て直しに取り組むことを切望するばかりである。(写真は、アメリカ自動車産業の中心デトロイトで星条旗の教会。提供:日本経営管理教育協会)