日本経営管理教育協会が見る中国 第611回 ――下崎寛

 2019年12月に中国武漢市において新コロナウイルスが発生し、中国旧正月の春節による中国人移動の時期も重なって中国から東アジア、中東、ヨーロッパ、米国等の全世界に新コロナウイルスが広まった。

 コロナウイルスの感染病は、今回初めてではなく、2003年に中国広東省広州市で発症したSARSコロナウイルスや2012年にサウジアラビアで発生したMERSコロナウイルスがある。

 私は、2003年春のSARSの時、ビジネスで中国の広州に行っていた。発生当時、中国人の友人に「変な病気が発生しているので、大丈夫か」と聞いたら、「広州では、交通事故で死亡する人よりも、SARSで死亡している人が少ないので、中国人は気にしていませんよ」との回答であった。しかし、あっという間に感染が広がり、中国政府は、その対応に苦慮することとなった。

 今回も、似たようなこととなっている。中国政府としては、地方都市の武漢市で発生した事件なので、安易に考えて初動対応が遅れてしまった。

 中国では、一見、国家からの管理と統制が厳しいと考えられるようだが、逆に、地方政府の役人は面子があるので、なかなか本当なことを中央政府に上申しないようである。

 しかし、中国政府の対応は早い。医師を全国から動員して武漢に派遣し一夜城の如く医療施設を設置した。そして、武漢市をはじめ湖北省、浙江省の都市封鎖を行った。さすが一党独裁政府の早業である。

 一方、日本の対応はどうだろうか。

 中国からの観光客の大幅な減少、輸入品の欠品等で中国頼りの世界経済構造のリスクが如実に表れた。今回の新コロナウイルスの日本に与える影響は、2011年の東日本大震災並みといわれている。

 中国からのクルーズ船について、さっさと各国にお客を帰国させて治療させればいいものを、全員留め置きして治療を行い、日本国民に感染病を広めてしまった。さらに、各国から治療方法を非難され立場を悪くしている。特に、治療にかかる医師等の関係者の努力は並大抵のものではない。日本人は、まじめで人の好い人種である。

 一方、日本のマスメディアや野党の論調は、ひど過ぎる。この国難の時に、特に反権力系の野党やマスメディアにおいては、その対応について政府を批判し、騒ぎ立てるばかりで、なんら具体的に対案を提案することはしない。

 寺田虎彦氏の言葉で「災害は時なし、場所なし、予告なし」といわれている。経済のリスクには、過去のデータは通用しない。日本社会も日本企業も過去に経験がない疫病クライシスによる経済の転機を迎えている。リーマンショック級のビジネスの対応が要求される時代が来た。(写真は、閑散とした新宿歌舞伎町。提供:日本経営管理教育協会)