日本経営管理教育協会が見る中国 第601回 ――楠田貴康

◆ICT(情報通信技術)サービスの発展

 日本における平成の30年間は、ICT(情報通信技術)サービスが大きな発展と普及を遂げた時代でした。特に、インターネットと 携帯電話の発展・普及は、平成時代を象徴するものとして国内の歴史に位置付けられることになるでしょう。 まさに平成と共に始まり、利用が広がっていったインターネットは、人々に新たなコミュニケーションの場や機会をもたらしました。

 また、様々な情報の収集を容易にすることで人々の知識を豊かにすると同時に、自らが情報を発信していくことで自己実現を行うことも可能としました。そして、経済・社会の様々な活動を支えるインフラとなりました。

 さらに、移動通信システムの発展は、人と人とのコミュニケーションに加え、モノをつなぐIoT(モノのインターネット) を登場させました。デジタルデータの価値創出力を高めるIoTは、人工知能(AI)や新たな第5世代移動通信システム(5G)との連動により、更なる発展を遂げようとしています。 

◆日本企業のICT投資

 日本の大きな課題の1つである少子高齢化による労働力不足に対処するためには、積極的なICT投資を行い、生産性向上を図っていくことが重要です。しかし、これまでの日本企業のICT投資は、業務効率化およびコスト削減の実現を目的とした「守りのICT投資」が中心でした。

 一方、米国企業は「ICTによる製品/サービス開発強化」「ICTを活用したビジネスモデル変革」などを目的とした「攻めのICT投資」が目立っています。

◆ICTの国際比較

 GDP世界1~3位の米国、中国、日本でIoT進展度に関する国際比較を行いました。各国のIoT進展状況を筆者が指数化するとともに、IoT進展の環境要因としてインフラの整備状況に関連する指標を定義し、これらの2つの指標について比較を行いました。

 結果は、両指標において高い位置にある米国、IoT進展指標は高いのですがインフラの整備に関連する指標は低い中国、IoT進展指標は低いのですがインフラの整備に関連する指標は高い日本という構図になりました。IoTの進展に係る課題についての国際比較(米、中、日)結果として、中国は人材の育成やユーザー企業へのIoTのユースケースの紹介などIoTの活用を進める環境に優れていますが、インフラ面での課題を指摘している企業の割合が他国に比べて多く、日本とは逆の結果となっています。

◆日本企業のICTに向けた労働生産性

 日本国内の先進的なIT(情報技術)利活用について目を向けてみますと、AI(人工知能)、 ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)等の先端技術を用いた 戦略的なIT活用の企画・検討体制を見ますと、大企業では約26%が、中小企業では約11%が明示的な企画・検討体制を有しています。

 次に、認知率の高い順に、AI、IoT、ビッグデータとなります。活用率が高い順では、IoT、ビッグ データ、AIとなります。AI、IoT、ビッグデータは経営者にも知られてきましたが、中小企業における活用はまだまだ乏しいというのが実情です。
先端技術の活用有無別に経営状況(売上高、経常利益額、3年前と比べた労働生産性)を見ますと、 AI、ビッグデータ、IoTのうちの少なくとも1つ以上を活用している企業は、そうではない企業よりも、売上高と経常利益額は増加傾向にある割合が高いです。

 また、3年前と比べた労働生産性も向上している割合が高くなっています。この結果はIT利活用により、労働生産性の分母の労働投入量も分子の付加価値も、それぞれ改善が可能です。両者による労働生産性の向上が今後大きく期待されています。(写真は、いつでも使えるICT。提供:日本経営管理教育協会)