日本経営管理教育協会がみる中国 第599回 ――水野隆張

 トランプ政権は、中国からの輸入品合わせて2500億ドル分に関税を上乗せしているが、このうち2000億ドル分については、現在10%上乗せしているのを来月1日から25%に拡大するとしていた。

 そして、12月1日に行われた米中首脳会談の結果、「中国がアメリカの農産物や工業製品などの買い入れを増やし、貿易不均衡を縮小すること」「知的財産権の侵害やサイバー攻撃の問題などについての協議を始めること」で合意したのである。これを受けてトランプ政権は、来月からの関税引き上げを見送ることになった。ただし、これらの問題について90日以内に合意ができなければ、やはり関税を引き上げるとしており、今回の合意は一時休戦をしたに過ぎないとされている。

◆今回の合意に至った両大国の深刻なマイナス背景

 このような合意に至った背景には米中双方に貿易摩擦によって自国の経済が傷つき始めているという事情があるようだ。まず中国側としては、いま中国政府が国有企業のリストラや、無駄な投資を抑えるための金融引き締めなど景気にマイナスの影響を与える構造改革を進めている最中で、ここでさらに貿易摩擦が強化されるとすれば、中国経済が一段と冷え込んでしまいかねない。このため、なんとか貿易摩擦を和らげたい思惑が働いたようである。

 一方、アメリカ側としても、アメリカへ輸入される製品や原料に高額の関税をかけたことで、製造業を中心にコストが上昇し、物価も上がり始め、企業経営や個人消費へのマイナスが懸念されている。農家からは関税の引き上げで大豆の輸出が減ったという不満の声も挙がり始めている。更にはアメリカ最大の自動車メーカーGMが五つの工場を閉鎖すると発表したことや、中国での新車販売が減少していることや雇用情勢の悪化も出始めており貿易摩擦による弊害が次第に表面化していることもかなりの衝撃を与えているようである。

◆米中の対立はさらに長期化しそうである

 米中対立がこれほどまでに深刻化したきっかけとなったのは、昨年の中国共産党大会での習近平国家主席の政治報告にあったと思われる。習近平主席はその中で「2035年までに経済力と科学技術力で世界の上位にのぼりつめ、今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を築く」と高らかに謳い上げ、さらには、政治体制についても「外国の政治制度を機械的に模倣すべきではない」と主張し、自由を重んじる西側の民主主義と一線を画する姿勢を鮮明に示した。これに対して米国を抜いて覇権を狙う中国に対する警戒感は与党共和党だけではなく「保護主義色がより強い」野党民主党、それに産業界にも広がっている。

◆日本を始め各国は米中両大国がこれ以上深刻な対立に進展しないように働きかけるべきであろう

 このように超大国アメリカと世界第二の経済大国となった中国が争ってばかりいては世界経済全体にとってもマイナスであり、日本を始め各国は、米中両国の対立がこれ以上エスカレートしないように自制をもとめたり、多国間の国際会議の場を利用して米中間の対立がこれ以上深刻にならないように働きかけることが求められていると思う次第である。(写真は、人民大会堂。提供:日本経営管理教育協会)