日本経営管理教育協会が見る中国 第598回 ――三好康司

 2014年、私は仲間5人とともに、月刊誌の連載取材で関西・関東・東北の日本酒メーカー5社を訪問した。獺祭をはじめとした日本酒がブームになり始めた頃であったと記憶する。そして、2018年の統計では、日本酒輸出量は222億円、この10年で3倍の伸びを示している。今回は、日本酒輸出について考えてみたい。

1.2014年頃の状況

 仲間5人での日本酒メーカーの取材は、京都伏見(2社)、東京都、茨城県、福島県それぞれ1社、計5社の訪問であった。当時は、獺祭を製造する山口県旭酒造の年商は、約30億円であったと記憶する(現在は、年商100億円を突破している)。各メーカーとも、日本酒離れや少子高齢化による需要減少懸念に危機感を抱き、新たなテイストの酒づくりを考えると同時に、新規顧客として、若者や女性をターゲットに設定していた。しかし、海外への販売(輸出)については、「いつか出来ればいいな」との考えは持っていたようだが、具体的なアプローチは、訪問先5社に関してはまだ進んではいなかった。

2.現在の状況

 私は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の専門家を務めているが、最近は日本酒メーカーの海外展開への相談が増えている。今年7月に四国で輸出セミナー講師を務めたが、その中には、四国で有名な日本酒メーカーも参加していた。数年前から輸出を志向し、現在は、アメリカに日本酒を輸出しているとのこと。同社は決して規模的に大きな日本酒メーカーではないが、英語が話せる社員も採用し、海外取引を強化している。2014年の取材時には想像もできなかったスピードで、日本酒メーカーの海外展開が進んでいる。

3.今後の見通し

 東京都港区西新橋にある「日本の酒 情報館」を訪れる海外のお客様が増えている。2年前に比べると約3倍になっているようだ。(出典:日本酒造組合中央会プレスリリース)

 また、来年2020年には、東京オリンピック・パラリンピックも開催される。現在の日本酒輸出先の上位5カ国は、アメリカ、韓国、中国、台湾、香港であるが、来年は、さまざまな海外の国・地域の人々が来日し、日本酒にふれあう機会が増えていく。関税により日本に比べかなり流通価格が高くなるという課題はあるが、日本酒の輸出量は引き続き増えていくのではなかろうか。

 海外で需要が増している日本酒の輸出拡大に向け、政府は、今は事実上、新規参入が認められていない日本酒の製造を輸出向けに限って可能にするため、酒税法の改正などを来年度の税制改正大綱に盛り込む方針である。日本酒は、国をあげた輸出戦略商品となってきた。(写真は、日本酒バルの光景。提供:日本経営管理教育協会)