日本経営管理教育協会がみる中国 第589回 ――永野剛

 2019年11月2日(土)~3日(日)。3年ぶりに和僑アジア大会が上海で開催される。 

 “和僑会”とは本国を離れた中国人である「華僑」に倣い、2006年に香港で発足した日本人による海外起業家団体である。一時期、日本国内には北海道から沖縄まで8都市に存在し、中国や東南アジアを中心とした世界各地には17都市に設立された。和僑会には3つの理念がある。1.和を以って尊しとなす。思いやりを持って人に接する。2.共存共栄、相互扶助。3.地域社会への貢献。この3つを基本理念として世界中の日本人起業家によって和僑会は設立されていった。そこには同じ志を持つ人同士の緩やかな連帯意識が存在している。

◆東京和僑会の存在意義

 私は、2011年から2014年まで和僑会に関わり、一時期は東京和僑会の事務局長という立場で、アジア各国を飛び回る仕事をしていた。「日本にいるのになぜ和僑なのか?」これは事務局時代に頻繁に受けた質問である。東京和僑会のビジョンは2つある。1.国際社会で通用する日本人「和僑」の育成。2.国際社会で生き残る「和僑ネットワーク」の形成。である。

 海外進出を目指す東京の起業家や経営者に、世界の和僑会を紹介し、海外の和僑会と日本企業を繋ぐハブとなる橋渡し役が東京和僑会の主なミッションであった。2012年頃の中小企業における海外展開は、まだまだ発展途上にあり、東京和僑会の存在は度々テレビや雑誌にも取り上げられた。この時期は電話での問い合わせも多かった為、月に一度、まとめて多くの方に説明する機会として定期説明会を実施し、毎回10名ほどの起業家や企業経営者に集まっていただき和僑会の説明をしていた。

◆和僑組織と日本人組織

 私が特に熱を入れて説明していた部分は、自己人(ズーチーレン)と外人(ワイレン)の概念である。儒教の考え方では、人間関係を構築する際、地縁(同郷)、血縁(親族)、業縁(仕事の関係者)が重要であると言われている。日本人と中国人の組織を比較すると、組織で動くことが得意なのは日本人で、個で動く事が得意なのは中国人であるという側面がある。これは単一民族で農耕民族の日本人と、多民族国家で広大な国土と人口、そして異なる言語を持つ中国人との歴史的な背景の違いがある為に、人を信用する文化形成がこのような“縁”を軸とした“関係(グワンシ)”が重要である為である。まずは、この部分を説明会参加者に熱を込めて説明させていただいていた。

◆和僑と駐在員の生き方は交らない

 海外の和僑会メンバーは皆この概念が身についていると思うが、駐在員や出向者などは3年ぐらいの現地駐在後帰国するため、無難にその時間を過ごす傾向がある。そのため、海外の和僑会の行事に参加しても、駐在員はなかなかお目にかかれなかった。

 メディアに取り上げられていた理由は、上海なら上海人をお客様としてどうサービスを提供するかを日々考え行動し失敗し、また改善し行動する。その繰り返しの作業を和僑会のメンバーは実施している。それゆえに、和僑の持つ土着性と現地市場を明確にターゲティングしている部分が、2009年頃からの数年間は日本社会で一定の役割があったと感じている。それまでは、ジェトロの海外支援サービスや、大手企業での海外駐在経験者がコンサルとして進出希望企業に対し支援していくのが、一般的な海外展開における情報収集のスタイルであったと思う。

 今年11月。3年ぶりに和僑アジア大会が行われることに、私自身は大きく期待している。改めて本来の和僑会の強みをしっかり再認識し、単なる日本人の膠着した組織を目指すのではなく、華僑に倣い日本人らしい場を形成し、“地域社会への貢献”という素晴らしい理念を貫く和僑会を再興していって欲しいと思う。(写真は上海駅。提供:日本経営管理教育協会)