本年7月、エジプトから違法に持ち出された疑いのあるツタンカーメン像が、エジプト政府が強く返還を求めたにもかかわらず、英国で競売に掛けられ470万ポンド(約6億円)もの高値で落札されたことが注目された。南米チリによるモアイ像の返還要求を大英博物館が拒否したり、長崎県対馬市の観音寺から盗まれ韓国で回収された仏像の日本への返還が実現していないなど、文化財の帰属をめぐる国家間の議論や紛争は少なくない。

 日本と中国とのあいだでも本年3月、中国から日本に流出した春秋時代(紀元前770年−紀元前450年頃)の青銅器8点の返還問題が発生したが、さきごろ返還が実現した。

 中国メディアの銭江晩報によると、本年3月3日、中国国家文物局が中国から違法に流出したとみられる青銅器が近日中に日本でオークションに掛けられるとの情報を得た。国家文物局はすぐに調査を開始し、それら青銅器が春秋時代の曾国の貴族の墓から盗掘され、2014年以降に違法に日本へ輸出されたものであると特定し、3月9日に北京の日本大使館に対し返還の要請をおこなった。

 1972年発効のユネスコの国際条約は文化財の違法輸出を禁じ、もとの所在国が要請すれば所有国は返還するよう求めており、同条約に則り外務省や中国大使館など日中両国の関係機関が緊密に協力し、オークションの中止、所有者による所有権の放棄などを経て、8月23日夜、青銅器は無事に北京へ搬送された。

 本報道を受けて、中国のSNS上には「歓迎回家」(ようこそ、お帰りなさい)といった返還を喜ぶ投稿が多数寄せられている。日本と韓国とのあいだでは文化財をめぐって対立が続いているが、それとは対象的に、今回の青銅器返還が日本と中国とのあいだの友好的関係構築にも一役買ったといえそうだ(編集担当:猶木縁一郎)(写真はイメージであり今回返還された青銅器ではありません。イメージ写真提供:123RF)