日本経営管理教育協会が見る中国 第582回 ――水野隆張

◆中国の製造業が米中貿易戦争への対応を迫られている

 米国との貿易戦争に収束の兆しが見えないなか米アップルなど外資系企業に続いて中国の製造業企業も対応を加速し始めている。


◆家具や繊維タイヤなどの業種が外資に続き海外移転を始めている

 米国は制裁関税の対象を中国からの輸入品ほぼすべてに広げる「第4弾」を9月と12月に分けて発動する。

 外資系企業アップルは中国生産の15~30%を海外に分散するよう主要取引先に促している。その意向を受けた電子機器の受託製造サービス大手は供給網の再編に動き始めている。米中協議の進展が見通せない状況が続き現在のサプライチェーンでは負担増を支えきれないと判断する企業が増えているためだと言われている。

 調査によれば2018年6月以降で少なくとも33社が海外移転や増産、海外子会社などへの追加投資を表明している。業種別では米国の対中制裁関税の対象となった家具や繊維、タイヤなどが多く海外展開が遅れていた業界中堅や準大手が目立っているという。

◆移転先としてはベトナムが先行している

 移転先ではベトナムが抜きんでている。33社のうち7割強の24社がベトナムを選んでいる。中国との地理的な近さや割安な人件費に加えて、カンボジャやラオスなどに比べてインフラ整備が進んでいることが理由のようである。

 ベトナムの2019年1~4月の輸出額は前年同期比で約6%増加した。中国向けが減少する一方で、米国向けが好調だったのである。米国の衣料産業などが制裁関税の拡大を見越して、製品の調達先を中国からベトナムにシフトさせた結果とみられている。

◆米中貿易戦争は東南アジア各国にとって漁夫の利を得る好機にもなるであろう

 米中貿易戦争によってリスクが高まることは間違いないが、重要なことはこれをチャンスに変えることであろう。サプライチェーン見直しの動きを捉え、中国に代わる調達先や生産拠点として自国をうまくアピールできれば、米中貿易戦争は東南アジア各国にとって漁夫の利を得る好機にもなるであろう。

 貿易戦争を主因とする世界経済の停滞を内需の拡大などで乗り切りつつ、サプライチェーン見直しの動きを引き寄せることへの巧拙が東南アジアの中長期的な成長を左右しそうな動向である。(写真は、中国の繊維工場。提供:日本経営管理教育協会)