日本経営管理教育協会が見る中国 第578回 ――水野隆張

 日本では参議院選挙投票日の7月21日、香港では民主派団体による「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模デモが再び実施された。主催者によると約43万人(警察発表は13万8千人)が参加した。デモ終了後、約千人が中国政府の出先機関に向かい、建物に落書きなどをした。

 中国政府は21日夜、「こうした行動は中央政府の権威への公然とした挑戦であり一国二制度の原則の限界ラインに触れる。絶対に容認できない」との談話を発表した。香港中文大の馬氏は「一連のデモの根底には、香港の自由や自治が侵されているとの懸念がある」と指摘している。

◆香港の「一国二制度」が骨抜きになろうとしている

 デモに関して深く関わっているのが「一国二制度」である。これは一つの国の中に二つの制度があるということである。

 香港は1997年に中国に返還される22年前までは、イギリスの植民地であった。イギリスが香港を返却した際に、中国と「50年間は行政や立法、司法の独自性を保つ」と合意し、この合意によって、香港には「香港特別行政区基本法」が生まれたのである。香港特別行政区基本法は、人権や自由、民主主義を保障するもので、これによって社会主義の中国の中に民主主義の香港がいる状態になっているのである。

 問題なのは、香港の選挙制度である。政治のトップの「行政長官」を決める選挙では市民の参加が厳しく制限されていて、2007年の選挙までは800人で作られた選挙委員会で行政長官を決めていたのである。つまり、香港の人口の700万人の内800人しか選挙に参加出来ないのである。因みに、この選挙委員会に参加している人は特権階級とも言われる人が多く、親中派が多いともいわれている。

 2014年に香港で起きた「反政府デモ」が選挙の民主化を訴えたもので、警察の催涙弾や催涙ガスから身を守るためにデモの参加者が雨傘をさして対抗したことから「雨傘運動」と呼ばれて広まったのである。

 「逃亡犯条例改正案」は、香港特別行政府が提案したもので「容疑者の身柄の引き渡しを簡略化しよう! そして現在、香港が身柄の引き渡し協定を結んでいるのは20カ国だけどもっと広めよう!」という案である。この改正案が通れば、「香港で暮らしている一般人が中国の司法で裁かれてしまったり、人権が犯される可能性」、また、中国の司法制度は香港や日本のものと違い拘束や拷問があり得るし、簡単に人に罪を着せて捕まえることがある。このことから、「香港で暮らす人が中国の司法で裁かれて拘束、拷問されてしまう」と香港の人々はデモで反対を掲げているのである。

◆台湾は香港情勢を自らの問題として注視している

 香港で「逃亡犯条例」改正をめぐり市民の抗議が続くなか、台湾世論の対中感情が悪化し、中国に対し強い姿勢をとる蔡氏の支持を押し上げている。香港に高度な自治を認めるとされた「一国二制度」を、中国は統一を目指す台湾にも適用しようとしている。そのため、台湾側は香港情勢を自らの問題として注視しており、「一国二制度」が骨抜きになっているとの見方が広がっているのである。

 現在、米中貿易戦争で中国経済は低迷に直面しているが、そうなると日本に接近してくる傾向がある。中国には国家安全危害罪とか国家転覆罪といった恐ろしい法律があり基本的に体制が異なる国家として付き合うべきであり日米同盟分断を狙ってくることには十分警戒心を怠ってはならないと思う次第である。(写真は、空から見た香港。提供:日本経営管理教育協会)