日本経営管理教育協会が見る中国 第573回 ――宮本邦夫

 去る5月の下旬、米国のトランプ大統領は対中関税第4弾を発表し、両国の貿易戦争はますますエスカレートしている。日本の企業もその影響を受け、シャープなどのように生産拠点を中国からベトナムなどの他国に移管するところも出てきている。今後、中国から撤退する企業が増えることが予想されるが、スムーズに撤退するためにどうすればよいかについて、以下で考えてみたい。

◇苦しい状況について詳しく説明する

 米中の貿易戦争が原因であるから、「仕方がないことだ」と撤退する理由など説明する必要はないと考えている向きもあるが、そうではあるまい。やはり撤退の理由について、従業員に詳しく説明することが大切である。すなわち、貿易戦争が自社に対して、どのような悪影響を与えたか、それに対してどのような対策をとったが、その結果がどうなったかなど、について詳細に説明することである。特に、貿易戦争が今後の経営に与える影響に関しては、より具体的に話すことが肝心である。また、一方的な説明だけではなく、質問を募り、懇切丁寧に応えなければならない。

◇これまでのことに心から感謝する

 米中貿易戦争による撤退であるから、当然の撤退と思って感謝の言葉もなく去っていくというのは礼儀に反する。感謝の気持ちを表すのは当然のことである。感謝するといっても、通り一遍の言葉でなく、具体的な事例を挙げて心から感謝することである。例えば、困っているときに従業員が協力してくれたことで、課題を乗り越えられたことなど、実際にあった具体的な例を挙げて、心底から感謝の気持ちを表すことである。感謝の気持ちを表すということは、相手の存在価値を認めることであり、認められた方は、自尊心が高められ寛大な気持ちになり、信頼関係の維持にもプラスになる。

◇再来したい意思を示す

 貿易戦争による外因的な撤退は不本意なものであり、経営環境が良くなれば、また中国に進出するチャンスもあるはずである。そこで、従業員だけではなく、取引先など他の関係者に対しても、経営環境が良好化すれば、また進出する意思があることを告げることである。感謝の念を表すことのほかに、再来の意思があることを表示することで、関係者との信頼関係がより強くなることは明白である。実際、日中の経済は相互依存的色彩が強く、今後ともいろいろな関係を保っていかねばならないことを考えると、「立つ鳥跡を濁さず」の良き撤退をしたいものである。(写真は、シャープのテレビ。提供:日本経営管理教育協会)