中国の地方政府が5G通信の普及策を続々と提出し、5G基地局の設置は予想を上回って加速する見通しだ。5月までに20省・市あまりが5G規格の通話を一部エリアで実現している。米国は、ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)など中国の通信機器大手を名指しして米国内からの排除を打ち出しているが、中国国内で沸騰する5G社会構築で爆発的に進む実用試験ノウハウは、両社をはじめとした中国の5G関連メーカーの優位性を一気に高めそうだ。中国の経済メディアの報道も熱い。

 上海市、広東省、河北省、浙江省、湖北省、ハルビン市、江西省、天津市、重慶市、武漢市の5G基地局設置目標は、合算で50万台を超えた。さらに、珠江デルタ、長江デルタ、京津冀(北京市、天津市、河北省)の各経済圏でも5G産業育成の方針を明示。5G普及に向けた基地局の整備が一気に活発化する見通しだという。

 今年4月に中国初の5G実験都市として5G通話が開通した上海市は、中国移動(チャイナ・モバイル)の5G実験都市として5G基地局が228カ所建設された。また、中国移動とともに通信大手3社といわれる中国聯通(チャイナ・ユニコム)、中国電信(チャイナ・テレコム)も上海を5Gモデル都市に位置づけ、3社がそろい踏みでインフラ整備を急いでいる。ファーウェイやZTEも上海に研究拠点を置き、「5Gの潜在力を解き放つ国家的な戦略都市」と目されている。年内に5G基地局1万カ所超え、21年は累計で3万カ所にまで拡大する予定だ。

 広東省が5月15日に発表した「5G産業発展行動計画(2019~22年)」は、珠江デルタ地域を対象に、22年末までに「5Gブロードバンド都市群」を形づくり、1兆人民元(約15兆9000億円)規模の5G産業集積エリアを整備する――との目標を掲げた。うち、広州市は年内の基地局1万カ所整備。商用サービス開始を計画中だ。

 通信キャリア最大手の中国移動(チャイナ・モバイル)は、各地の政策に連動。17都市で5G試験、または、応用モデルを導入。業界2位の中国聯通(チャイナ・ユニコム)は、上海市、広州市、深セン市、南京市、杭州市、雄安新区を選定。33都市で重点地域をカバーしている。中国電信(チャイナ・テレコム)は、複数の重点都市で5Gネットワークを整備する計画で、19年末には基地局数が2万カ所に増える見込みだ。

 5Gネットワークの整備が及ぼす影響は、通信や情報分野に留まらない。5Gとクラウド・コンピューティング、ビッグ・データ、人工知能(AI)などハイテク技術との融合によって研究・開発、製造、管理サービスなどに大規模な変革をもたらす見込みだ。各地で5Gモデル都市化計画が進み、そこで行われる膨大な実験が、関連メーカーに多大なノウハウをもたらすだろう。

 米国との貿易戦争の激化によって、中国政府が掲げていた「中国製造2025(2025年には中国が製造強国に食い込み、2045年には世界のトップになる計画)」の旗は降ろしたようにみられたが、実際の5Gを巡る動きは峻烈といえる。5Gを突破口として一気に世界トップを引き寄せようとするかのような勢いがある。(イメージ写真提供:123RF)