日本経営管理教育協会が見る中国 第564回 ――水野隆張

◆中国に関して欧州がお人好しでいる時代は終わった

 仏大統領マクロン氏は3月22日にブリュッセルで行われたEU首脳会談の場で記者団に対して「中国に関して欧州がお人好しでいる時代は終わった。長い間、われわれは対中政策で共同歩調を取らず、中国は欧州の分断から利益を吸い上げて来た」と警戒感を率直に述べたのである。そして、EU首脳らは会議で、欧州委員会による対中戦略の見直し計画を承認したのであった。

◆「中国も豊かになれば将来は民主化するのではないか」との夢すら抱いてきた

 フランスでは、中国研究に従事する専門家の多くは左派に属し、容共ですらあり、かつて最高指導者であった鄧小平がフランスへ留学した歴史も関係しているのか、共産党が支配する中国に一定の親近感を抱く人も少なくないということである。

 そして、「中国も豊かになれば将来は民主化するのではないか」との夢すら抱いてきた専門家たちの多くが、中国を脅威と見る視点を拒否してきているのである。一般国民も、中国は欧州から非常に遠く、中国が欧州を侵略した過去もなく、互いの文化への憧れが大衆レベルでの関心の中心を占めて来た。

◆中国はEU共同体を「分断」する挑戦だと危機感を強めている

 一方、中国が提唱する陸のシルクロードと呼ばれる「一帯一路」では、中国は欧州において、すでに旧共産圏16カ国との間で協力の枠組み「16プラス1」を持っている。バルト3国、旧東欧諸国、バルカン半島の国々が参加し、大規模なインフラ整備事業ではこれらの国々の対中依存度は高まりつつある。

 問題は、このうちポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、バルト3国がEU加盟国であることだ。EUという共同体を運営するブリュッセルの執行機関などから見れば、共産党一党独裁の中国が国家資本主義と「運命共同体」の建設を掲げ、欧州へひたひたと迫ってくる事態は、体制と価値観を共有する共同体を「分断」する挑戦だと危機感を強めているのである。

◆EUがマクロン氏の問題提起をどこまで議論するかは未だに不透明

 中でも、中国企業に首都アテネ近郊のピレウス港の運営権を委ねたギリシャが、すっかり中国の影響下に取り込まれた事実が重大な先例として挙げられている。更にはイタリアのコンテ首相と中国との間でインフラ整備を通じて中国の勢力圏を拡張する構想「一帯一路」で、中伊両国が協力することを定めた覚書に両首脳が署名したのである。交通・インフラ整備や投資促進のほか、西のジェノバ、東のトリエステという2つの港湾開発を中国が請け負うというものである。

 コンテ氏は「両国はもっと効果的で良好な関係を築かなければならない」とまで語っているのである。ギリシャにしろイタリアにせよ容易ではない経済問題を抱えており、中国の潤沢な資金は干天の慈雨なのである。マクロン仏大統領は「中国はEUの一体性と価値感を尊重しなければならない」といっているが、一方では、300機のエアバス機売却について習近平氏の同意を得たことが示すように、対中関係は是々非々のバランスも難しい処である。EUがマクロン氏の問題提起をどこまで議論するかは未だに不透明なのである。(写真は、セーヌ川が流れるパリ。提供:日本経営管理教育協会)