明代から約600年の歴史を持つ北京の紫禁城(故宮)。清朝最後の皇帝・溥儀が去った後、1925年からは多数の古書・絵画・工芸品を収蔵する「故宮博物院」となった。台湾にも同名の博物館があり、そちらは主として1940年代に大陸から運び込まれた物品を収蔵している。これらの博物館や文化財に関するトピックは、中国人にとってはセンシティブな話題の一つだ。

 中国メディアの観察者網は2日、SNSの微博(ウェイボー)で同日、中国出身の俳優・趙立新(チャオ・リーシン)氏がつぶやいた「日本人は北京を8年占領したのに、なぜ故宮の文化財を持ち去ったり故宮を焼き払ったりしなかったのか? これは侵略者の性質に一致するだろうか?」という発言が、たちまち大論争を巻き起こしたと報じた。

 記事によると、趙氏は1968年生まれの50歳で河南省出身、国籍はスウェーデン。中央戯劇学院とロシアの全ロシア映画大学を卒業後、スウェーデンで活動し、近年は中国国内で活躍している。俳優・監督・脚本を一手にこなす上に、四ヶ国語に精通する趙氏は、業界内で「全能型の人材」等と称えられているという。

 趙氏は先月31日にも微博で「英仏連合軍はなぜ円明園(北京にある清代の離宮の遺構)を焼いたんだ!?」ともつぶやいていた。2日の「日本人は北京を8年占領したのに~」の発言に対して寄せられた、「彼らは略奪ではなく占領と統治の準備をしていたのだ」という一般アカウントからの意見には、趙氏は「それではなぜ投降する前も燃やさなかったのか」という主旨の返信をしている。また、「価値の高い文化財は日本が入ってくる前にすでに南方へ運んであった」という旨の指摘については、「あまり納得できない。運ばれていないものも数多くあった」等と応じている。

 趙氏の発言については、「侵略の美化だ」、「文化財の南遷という痛ましい歴史を理解していない」など、時間を追うごとに批判がヒートアップ。中国共産主義青年団中央委員会や、雑誌「紫光閣」など、共産党系の公式アカウントからも「観点が幼稚すぎる」、「国の過去の歴史についてもっと知るべきだ」などのコメントが寄せられ、趙氏は該当の発言を削除したという。何かの話題について議論が炎上することはネット上では珍しくないが、そこに国家が足を踏み込んでくるあたり、中国らしいと言うべきかもしれない。(編集担当:伊藤由記)(イメージ写真提供:123RF)