日本経営管理教育協会が見る中国 第561回 ――水野隆張

◆中国の国会である全人代が閉幕

 3月15日に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代)は1年前の強国路線は影を潜めて米国との貿易戦争の影響下で米国を意識した大会となった。米国が標的にするハイテク産業の育成策「中国製造2025」にはいっさい触れず、外資の技術を強制的に移転させることを禁じる「外商投資法」を採択した。

 国内からの反発が出かねないほど米国に譲らざるを得ないのは、経済の不振が深刻なためである。李克強首相は政府活動報告で2兆元(約33兆円)規模の減税と社会保険料の下げを表明している。トランプ米大統領は中国を交渉の土俵に引っ張り出し、そこで得た成果を持って来年の大統領の選挙に挑む狙いと思われる。

 しかしながら全人代の直前に米朝首脳会談がもの別れに終わりトランプ大統領は北朝鮮の金正恩委員長が求めた制裁の解除をあっさり拒否したのである。習近平氏は訪米してトランプ大統領に追加関税の撤廃を求めても、金正恩委員長と同じ仕打ちを受けるのではないかという懸念から訪米できなくなったようである。3月中とみられていた米中首脳会談は、4月以降にずれこむとの観測が強まっているようである。

◆中国は勝ち目のない貿易戦争に応じているとしか思えない

 米中貿易戦争では、中国は米国に対する輸出が5000億ドルであるのに対し、輸入は1500億ドルしかなく、単純計算で制裁余地が3500億ドルも差があることになる。しかも中国の主な輸入品は小麦や豚肉、果物などの食料品や天然ガスなどのエネルギーが大半で、これを制限すれば自国に影響がもろに跳ね返ってくるのは明らかである。だだでさえ中国は貿易依存度が33.3%と高い国なのである。(日本25.4%米国19.9%)

 一方、米国からすれば、中国で生産されている工業製品の多くは、他国に代替可能であり、中国独自の物ではないのである。中国は勝ち目のない戦争に応じているとしか思えない。確かにこれまで中国は世界の工場として君臨してきたのだが、ここに25%の関税がかかれば、中国は価格競争力を一気に失うことになり、中国当局からの資本規制があるため利益が出ても海外への送金は難しく、多くのグローバル企業にとって中国は魅力の少ない国になりつつあるようだ。

 今後同盟国米国は中国との全面戦争へと舵をとることになるであろう。

 今後予想されることは中国が米国を「保護主義」と決めつけて、貿易戦争は米中当事国だけではなく世界経済に悪影響を及ぼすと宣伝していくことになるであろうが中国はますます孤立していくことになるように思われる。米国は第2ステージとして金融制裁、宣伝戦、サイバーといった「全面戦争」へと仕掛けていくことが予想されるからである。

 それによって中国経済は下記のような経過をたどることが予想される。貿易戦争の悪化⇒中国の輸出の冷え込み⇒企業業績悪化⇒株価下落⇒海外投資家の離脱⇒人民元売りドル買い⇒中国株価下落。今後同盟国米国は中国との全面戦争へと舵をとることになるであろう。そして、米国は世界各国にたいして貿易交渉において米中どちらにつくか、踏み絵を踏ませていくことになるであろう。(写真は、人民大会堂。提供:日本経営管理教育協会)