日本経営管理教育協会が見る中国 第558回 ――磯山隆志

◆ファーウェイとは
  
 ファーウェイ(華為技術)は中国の世界的な大手通信機器メーカーである。1987年に設立され、主にコンシューマー向け端末事業、法人向けICTソリューション事業、通信事業者向けネットワーク事業を展開している。2017年の売上高は約10兆円、全世界で18万人以上の従業員が働き、170カ国以上で事業を運営しているとされる。

 ファーウェイは研究開発に力を入れていることでも知られている。売上高の10%以上をR&Dに投資し、従業員のうち約8万人がR&Dに従事しているという。世界でもトップクラスの特許を申請しており、7万件以上の特許を保有している。2018年度上半期にはスマートフォンのシェアにおいて世界第2位となった。

 2005年には日本法人が設立された。2011年には中国企業として初めて経団連にも加入した。2017年時点では950人以上の従業員が働き、75%以上が現地採用だという。

◆アメリカでファーウェイを排除する動き

 2018年8月、2019年度の国防権限法がトランプ大統領の署名により成立した。そのなかでは連邦政府の各省庁と、政府と取引のある企業・団体に対して、ファーウェイとZTEの2社で製造された情報通信機器やそれらを使用したサービスの調達を禁止している。

 この背景には主にサイバーセキュリティと第5世代通信システム(5G)をめぐる覇権争いの二つの側面があるとみられている。中国では国民や組織に情報活動を義務付ける「国家情報法」があるため、ファーウェイもその影響下にあり、同社の通信機器を通じて情報が漏洩することをアメリカは懸念しているとされる。一方、5G対応の通信機器においてファーウェイが技術的、価格的な優位性からシェアを伸ばしているため、アメリカが市場や国内の通信インフラにおける覇権を失うことへの危機感があるとの見方もある。ファーウェイは自社製品の安全性を主張しているが、以上のような懸念をぬぐい切れていない。

◆各国の動き

 日本においても2018年12月、政府が「IT 調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」を決定し、4月以降、各省庁が情報機器やサービスを調達する際に、サイバーセキュリティなどの観点から、サプライチェーンリスクへの対応が必要なものについて内閣サイバーセキュリティセンターに助言を求めるなど手続きを厳格化した。これは名指しこそしていないが事実上ファーウェイやZTEを排除するものとみられている。これを受け携帯大手各社も中国製品を排除する方針であるとの報道がなされた。

 他にもオーストラリアやニュージーランドなどがファーウェイ排除に同調する動きをみせる一方で、イギリスは安全保障上のリスクは管理可能であるとし、ドイツも容認する方向であるとされる。

 各国の足並みが揃わない状況でアメリカは圧力を強めているという。またこれに対し、中国政府もファーウェイ排除に動く各国への圧力を強めているといわれる。米中が対立する狭間で各国は選択を迫られている。日本においてもファーウェイがスマートフォン用の部品供給の増加を要請するなど存在感を増すなか、対米関係も考慮しなければならない難しい選択をすることになると思われる。

 3月7日、ファーウェイが同社製品の使用禁止に対し、憲法違反であるとして米政府を提訴した。これによりアメリカに対抗する姿勢を明確にし、今後は法廷で争うことになる。中国の「国家情報法」の存在と中国政府との結びつきが疑われるかぎり、ファーウェイに対する不安感を完全に払拭するのは難しいであろう。この対立が終結する見通しは立っていない。そのような状況下で各国、各企業の対応に注目したい。(写真は、日本の大手携帯会社本社ビル。提供:日本経営管理教育協会)