上野の東京国立博物館で開幕されていた特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」が24日、大盛況のうちに閉幕した。多くの日本人にとって中国文化に触れる貴重な機会となった今回の特別展だが、一方では中台関係のあつれきが表面化する場ともなったようだ。

 中国メディアの中国新聞網は25日、「なぜ台北の故宮博物院は今回、祭姪文稿(さいてつぶんこう)を日本に貸し出したのに、大陸の博物館にはまだ貸し出していないのか?」と台湾当局を非難する記事を掲載した。

 「祭姪文稿」は、今回の特別展の目玉となった台湾所蔵の書だ。唐の玄宗皇帝の時代、安史の乱で犠牲となった従兄の末子を供養するために書かれた文章の草稿といわれる。本物を目にする機会は非常に貴重であるため、この書を目当てに大陸中国から訪日した観光客も多かったという。

 今回の日本での展示に対しては、開幕前から一部で批判の声が上がっていた。中国メディアの環球時報は1月14日、「祭姪文稿」に対する東京国立博物館の防護措置が不十分ではないかと報道。また、展示によって傷むリスクがあるにも関わらず、古く貴重な国宝級の文化財を日本に貸し出したこと自体についても批判した。台湾内部でも、野党・国民党が「祭姪文稿」の貸し出しについて蔡英文(さい・えいぶん)総統が率いる民進党政権を非難するなど、中台両岸から批判の声が上がり、騒ぎはネット上にも波及した。

 中国新聞網の記事は、台湾が「祭姪文稿」を貸し出したことによる論争は「展示が終わったからといって一段落するものではない」と釘を刺し、「蔡英文政権となって以来、“文化的台湾独立”現象がますます激しくなっている」と厳しく指摘した。

 批判の矛先は日本にも向けられている。今回の特別展では、「祭姪文稿」の文字でデザインされた菓子箱や小皿がグッズコーナーで販売され、日中両国のネットユーザーから疑問の声が上がったという。亡くなった人を悼む「祭姪文稿」の内容や、文化財としての重みと歴史的経緯を考えれば、確かに日本側の配慮が足りなかった部分はあるだろう。

 中国新聞網の記事は、「日本のグッズに関する議論は、台北の故宮博物院がこのように貴重な文物を日本に送って展示した行為への疑問の声にもなっている」という論を展開し、執拗なまでに台湾を非難。その一方で、「大陸は、両岸の文化団体による文化財の相互交流を支持・奨励している。台湾が心配しているような司法・差し押さえの問題は起こらない」と語りかけた。
 
 華僑向けメディアの多維新聞によると、台湾では最近「北京の反対をかえりみず」という言い回しが流行しているらしい。大陸へのフラストレーションをうかがわせる流行語である。今回の論争の焦点となった「祭姪文稿」は、貴重な文化財として一度展示すると三年は休ませる決まりだそうだが、次はいったいどこで展示されることになるだろうか。(編集担当:伊藤由記)(イメージ写真提供:123RF)