「日本のハイスキルなIT人材や管理職の給与は、中国の半分近い水準にとどまり、日本企業はハイクラスな人材の確保で後れをとっている」――英国に本社を置く人材紹介会社ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンのマネージング・ディレクターのマーク・ブラジ氏は語った。人手不足で人材採用に苦労している日本企業は少なくないが、「ダイバーシティやインクルージョンなど、採用に関する意識の改革を今から始めないと、アジアの労働市場で優れた人材を獲得することができなくなる」と警鐘を鳴らした。同社は2月7日に「2019 ヘイズ アジア給与ガイド」の発表に伴う記者説明会を実施した。

 「2019 ヘイズ アジア給与ガイド」は、アジア5カ国・地域(日本、中国、香港、マレーシア、シンガポール)の社会人5171人に対し、雇用についての実態をアンケート調査したもの。調査期間は2018年9月~10月。また、1244職種におけるアジア5カ国・地域でのヘイズ社の実績ベースの給与レンジを集約した。

 この結果、日本の給与は、アジア地域においてジュニアレベル(経験1年未満など)や事務職において給与水準が高いものの、部長級やマネジメントレベル、あるいは、IT人材における給与は、中国や香港などと比較して低い水準にあることが明確になっている。これは、中国などがハイクラスの人材に対して積極的な昇給を実施していることに対し、日本の昇給率が全般に低いことなどが要因になっている。ブラジ氏は「最高の人材を惹きつけて維持するためには、日本企業は国際競争力のある報酬と柔軟な働き方を提案する必要がある。国内の企業の間で同業他社比較では人材を引き留められても、流動性の高いマネジメントレベルの人材は、意識を変えない限り、引き留めておくことは難しいだろう」と見通した。

 たとえば、CFOの給与水準は、日本企業が3000万円に対し、中国企業は4700万円、CIOでは日本の2500万円に対し、中国は4390万円。カントリーマネージャーは日本の3000万円に対して中国は6270万円と2倍以上の差がある。

 IT人材にしても、データサイエンティストの給与で日本は1200万円に対し、シンガポール1420万円、中国1570万円、IoT技術者に対し日本は1300万円に対し、シンガポールが1420万円、中国が1410万円。ディープラーニングプロジェクトマネージャーが日本は1200万円に対し、シンガポールが1260万円、中国が1330万円と、いずれも日本は中国のみならずシンガポールにも劣っているという実態がある。

 このIT人材の確保は国際競争が最も熾烈な分野で、日本が最も苦戦している分野になっているという。ただ、トップIT人材に対する前年からの昇給率は、中国企業がIoT技術者に24%増、データサイエンティストに67%増、ディープラーニングプロジェクトマネージャーに30%増などと大幅な昇給を実施しているにもかかわらず、日本企業の昇給率はゼロ%と、給与水準が逆転しても、日本企業の処遇見直しの動きは鈍いという。

 ブラジ氏は、「日本企業は、必要な人材を十分に獲得できているのか、また、人材の流出リスクは高まっていないかというポイントなどで、人材戦略を再構築する必要に迫られている。日本企業の従業員の生産性が低いことを改善しようと、構造改革や成果主義の導入などが進んでいるが、そのスピードをより速める必要があるのではないか」と語っていた。(写真は「2019 ヘイズ アジア給与ガイド」の記者説明会より)