日本経営管理教育協会が見る中国 第550回 ――水野隆張

◆金正恩、電撃訪中の背景

 米中の対立はもはや戦闘こそ行われていないがまさに戦争状態に陥っているといっても過言ではないであろう。しかしながら日本の政治家達は平和ボケしておりその深刻さを認識していないようにさえ見える。トランプ大統領は米朝首脳会談を前にして、対話路線のティラーソンを解任して、後任に「金正恩を除去することを優先せよ」と主張するポンペオ氏をあてており、さらには、マクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)を解任し、強硬派のボルトン氏を起用している。このことは米朝会談が決裂した場合には北朝鮮を先制攻撃するぞという警告をトランプ氏が発しているということであろう。

 そこで今回の金正恩の緊急訪中は唯一の軍事同盟国である中国との蜜月関係を米国に見せつけておくことにしたことが考えられる。

◆金正恩のしたたかな対米戦略

 米朝会談については北朝鮮は早くからロシアのプーチン大統領や韓国の文在寅大統領とも緊密に連絡を取っており唯一外されている関係国は日本だけとなっている。もし日本が拉致問題を重視して、小泉元総理のように北朝鮮への電撃訪問を断行していたならこの流れのなかで、日本が主導権をとることもできたかもしれないが、安倍政権は圧力強化を叫び続けるだけで現状では蚊帳の外の存在となっている。背後に中国とロシアという大国を抱き、本来は敵国であった韓国とアメリカと会談するというのが金正恩のしたたかな戦略と思われる。

◆このような現状に日本はどう対応すべきであろうか?

 中米対立の中であれほど反日を掲げていた中国が態度を一変して日本に接近を図っている。このことは明らかに対米関係を有利に進めるために日米同盟を分断しようとする中国の対日戦略の一環であるとしか思えない。自民党の一部にはこの際悪化した対中関係を改善するチャンスだと受け止めて日中関係の好転に期待する向きもあるようだが、この際慎重に対応すべきだと考える。

 大国の戦争状態のときに過去の対応を反省すれば第二次大戦中、日本はナチスドイツと独裁国イタリアとの三国同盟を締結して最終的には米英連合軍と戦って敗戦するに至った。このように組む相手を間違えれば国を亡ぼす危険を冒すことになる。

 中国が米国を凌いで覇権国になるという夢は現在のところ正に幻に過ぎないであろう。今日本がやるべきことは過去の過ちを繰り返さないように、まずは米国との関係をますます強固にすることであろう。中国との接近は当面控えるべきであろう。さらには米国が中国を叩いている間は日本も米国に同調すべきであろう。世界情勢に疎い指導者が国際情勢の動向を見誤らないようにしっかりとした世界情勢の動向を見定めるべきだと思う次第である。健全な野党の存在が危ぶまれる現状では総理官邸が主導して日本の国際的行く末をしっかりと確保すべきであろう。(写真は、総理官邸プレート。提供:日本経営管理教育協会)