米中の貿易摩擦が厳しい対立となるほどに、中国のテクノロジーの発展は急速に進んでいる。特に先端のAIや5Gネットワークなどにおいては、世界のトップ集団にあると目されている。その中国においてテクノロジーの発展を担っているといわれる存在は、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と称されるITの3巨頭だ。その一角であるアリババ・グループのグローバル研究機関「達摩院(Damo=Discovery Adventure Momentum Outlook)」が1月2日にテクノロジー分野の2019年「十大トレンド」を発表し、注目を集めている。

 Damoが発表した「十大トレンド」は、◆スマートシティの誕生、◆音声AI特定分野のチューリング・テスト(Turing Test)合格、◆AIチップが及ぼす画像処理半導体(GPU)の絶対的地位動揺、◆超大規模ニューラルネットワークによるAI「常識」学習の進歩、◆コンピューターシステム構造の再構築、◆5Gネットワーク通信応用シーンの刷新、◆デジタル身分証の利活用拡大、◆自動運転の「冷静発展期」突入、◆ブロックチェーン技術の「理性回帰」、商用化加速、◆デジタルセキュリティ保護技術の進化――となっている。

 中でも「AI」は、テクノロジー業界の「最注目分野」として熱烈に注視している。Demoによると、2018年は「AIが実験室から抜け出して現実世界に入り込む元年」だったとすれば、19年は「人類とAIが全面的に協力するスタート地点」という。

 特に、モバイルデバイスに関しては、AI音声合成システムが人間の音声と同一レベルに達し、音声AIが特定対話で「チューリング・テスト」(知能があるかどうかの判定)に合格する可能性もある。都市部では、人と会話ができる公共施設がより多く誕生すると予想した。

 また、「生体認証技術」も本格応用段階を迎える。現金だけでなく、身分証明書も持たずに外出できる時代はそう遠くない。デジタル身分証は“第2の身分証明書”として存在感を高めていくと想定した。

 そして、大容量化、超低遅延を実現できる5G時代の到来は、ネットワークのクラウド化、ソフトウエア化を促進。車車・路車・路路間通信システムや産業用IoTなどの領域で、革新的な技術応用をもたらす。また、都市管理技術プラットフォームも交通分野から、消防、都市開発、環境保護などの分野へと拡大。リアルとバーチャルが融合したスマートシティの誕生を促進すると分析した。このスマートシティに関する実験は、広い地域を実験施設に変えてしまえる強力な行政の力がある中国が抜きん出ている。

 ただ、新技術は社会生活を便利にする一方、セキュリティ脅威をももたらす。ネットセキュリティは19年も引き続き、テクノロジーの注目分野となる。より厳格なサイバーセキュリティ政策を打ち出す動きが各国間で加速するなか、各企業は個人データ保護分野の対策により多くのコストを投じる必要に迫られると予想。各システム間をまたいでデータを追跡管理できるような新技術の開発・応用が加速するだろうと総括した。そして、中国の景気下振れ圧力が強まる環境下にあって、これらの先端テクノロジーは新たな経済活力を生み出す源泉になり得ると予見している。(イメージ写真提供:123RF)