日本経営管理教育協会がみる中国 第547回 ――水野隆張

◆米中冷戦拡大への危惧

 アメリカのトランプ政権で安全保障政策を担ってきたマティス長官が来年2月末に辞任することになり、日本との同盟関係を含め、国際協調を重視してきたマティス長官の辞任によって、今後、アメリカの安全保障政策に大きな影響が出る可能性が指摘されている。

 一方、中国の習近平国家主席は18日、改革開放40年を祝う記念式典で講演し、「党、政、軍、民、東西南北すべてを党が指導する」と述べ「共産党の指導が中国の特色ある社会主義の最大の強味」と言い切り、鄧小平氏がひとりの人間に権力を集め過ぎない集団指導体制の構築に心を砕いたこととは逆に、習氏は権力を一身に集めようとしている。中国を改革開放に導いた鄧小平氏の路線が幕を下ろそうとしており、習氏の「新時代」は、米国との戦いが避けられない険しい道のりになりそうである。

◆鄧小平氏の「韬光养晦(とうこうようかい)」路線は捨て去られた

 鄧小平氏が残した「教訓」は、中国が「発展すればするほど謙虚であるべきで、無思慮に他人を批判してはならない。分を越えたことは言わず、分を越えたことはしてはならない」ということであった。才能を覆い隠し目立たせないというこの「韬光养晦(とうこうようかい)」路線は、南シナ海や東シナ海であっさりと投げ捨てられ、近隣諸国に対し牙を剥きだしてやりたい放題の振る舞いを見せている。中国は南シナ海での軍事的覇権を強めており、これまで、人工島などに地対空ミサイルや高周波レーダーを整備していたが、ついにパラセル(中国名・西沙)諸島にあるウッディー(永興)島に、射程400キロの対艦巡航ミサイルを配備したようである。「航行の自由」を守ろうとする米海軍の作戦への挑戦と言える。さらに10月2日には仏国際放送局RFIの中国語版サイトによると、南シナ海を航行中の米イージス駆逐艦に中国軍の駆逐艦が異常接近したと報じた。

 米太平洋艦隊のクリステンセン副報道官は「中国の駆逐艦は粗暴かつ危険に、まるで素人が操縦しているかのように接近してきた。その距離は45ヤード以内で、衝突を避けるために航路を変更した」とコメントしている。これに対して中国国防部は「米駆逐艦が南シナ海のわが国の島付近海域に勝手に侵入したため、中国海軍駆逐艦が即時行動した。法規に基づき船の識別を実施するとともに、海域から出るように警告した。中国の主権と安全を著しく脅かし、中米関係や地域の平和・安定に重大な損害を与える行為だ」と非難声明を発表している。

◆日本の緊急課題―中国の脅威への対処

 このように米中貿易戦争から始まって今や米中冷戦の長期化が危ぶまれているとき両大国の狭間にある日本の安全保障は今後どうなるのであろうか?折しも日本政府は新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画(2019年~23年度)を閣議決定した。中期防は当面5年の防衛装備の目標を示す。

 海上自衛隊で最大級の「いずも」型護衛艦2隻を改修し、短い滑走で離陸し垂直に着陸できる戦闘機「F35B」を購入する方針を盛り込んだ。中期防は当面5年の必要総額として「おおむね27兆4700億円程度」と明記した。14~18年の整備計画よりも3兆円弱増える。

 当面日本の安全保障は日米同盟に頼らざるを得ないが「アメリカファースト」を掲げるトランプ政権が尖閣諸島などの無人島に中国軍が偽装した漁民によって侵犯された場合直ちに危険を伴う米兵の派遣に応じるとはとても考えられない。日本本土に対する大規模攻撃や侵犯にたいしては日米同盟は万全に機能することは間違いないが、中国との小競り合いには日本独自に素早く対応することが求められるであろう。その場合日本国憲法による規制によって国会の承認が求められることになるが、緊急事態には間に合わない恐れがある。それに対応するためには事前に総理官邸主導で緊急に対応できる体制づくりが不可欠になると思う次第である。(写真は、国会夜景。提供:日本経営管理教育協会)