日本経営管理教育協会が見る中国 第540回 ――水野隆張

◆日中首脳会談「競争から協調へ」

 日本が尖閣諸島(中国名・釣魚島)を国有化したのを受けて日中関係が冷却化してから5年余り経つが、この度10月26日に安倍首相は中国を訪問し北京の釣魚台迎賓館で習近平国家主席と約1時間20分会談した。安倍首相は日中関係について「競争から協調へ新しい時代へ押し上げたい」と提案し、習氏は2019年の訪日に意欲を表明し、日中首脳の相互往来の定着を目指すこととなった。

◆中国が対日政策転換へ至った差し迫った理由

 長い間冷え切った日中関係が急速に緩和し始めた背景には中国が海軍力を高めるなど領土問題に関連する一連の国家戦略的目標を達成し、尖閣諸島が日中関係の障壁にならなくなったことがあると言われている。更には米中間で起きている貿易戦争も日中関係の接近を促したということである。現在の国際情勢、とりわけ、米国が貿易保護主義に進む中、対立よりも日中共通の利益の重要性の方がより高まったということである。さらには日本との同盟関係をさほど重要視しないトランプ大統領への対応に苦慮する日本にとっても中国との関係改善にはメリットがあり、不透明な国際情勢の中で日中韓3カ国が歩み寄る必要性を高める結果となったということもできる。

◆米国は中国の「中国製造2025」を最も警戒している

 一部のマスコミ報道では11月6日の米国の中間選挙でトランプ大統領が勝利すれば矛を収めて中国・習近平国家主席と“手打ち”になるという向きもあったが最近ではその予想は外れて貿易戦争が長期化の様相を帯びていると懸念する声も少なくないようである。

 トランプ政権の目的は、単に対中貿易赤字を解消することだけではなく、真のターゲットは、ハイテク産業をめぐる覇権争いに勝利するということなのである。中国は2015年に独自の産業政策「中国製造2025」を打ち出している。次世代情報技術やロボットなどの重点分野を発展させ、25年までに製造強国を目指すというものである。この「中国製造2025」をアメリカは最も警戒しているのである。今のままでは米国はハイテク産業分野で中国に追い抜かれ、世界経済の覇権を失いかねないとアメリカは恐れているのである。中国との貿易戦争は「中国製造2025」が続く25年まで続く可能性があるということである。

◆これからの日本の中国への対応は?

 この度の日中首脳会談で今後日中関係がすべて緩和の方向へ向かうというのは早計であろう。中国の長期的な対日戦略は今後も変わらないと見るべきであろう。特に米国トランプ政権はアメリカファーストの基本方針を掲げているが、アメリカが戦略面で日本を守ること自体には、何ら問題はないであろう。第一に、ミサイル防衛システムはすでに日本に存在するし、第二に、日本に対する戦略的脅威、つまり、誰かが侵攻してくるような脅威に対しては、米軍基地があり、空母も派遣されているからである。ところが中国の脅威というのは、その性質が異なっている。日本本土への侵攻というより、離島の占拠というものだからである。実際には、アメリカは、現状では日本の島の防衛までは面倒を見切れないであろう。

 中国軍が日本の本州に上陸しようとしても、アメリカはそれを阻止できるが、そのアメリカも、ほとんど人が住んでいないような、日本の一つ一つの島まで積極的に守ることは出来ないということである。これらを守るのは完全に日本側の責任ということであろう。

 そのためには憲法改正や防衛力の強化など官邸主導で早急に進めることがアメリカファーストのトランプ政権との同盟力強化につながることになると言わざるを得ないと思う次第である。(写真は、首相官邸の庭。提供:日本経営管理教育協会)