中国のオンラインゲーム規制の強化、そして、5G(第5世代移動通信システム)時代の到来によって、中国のインターネット業界が大きな変革期を迎えている。業界を代表する「BAT」(百度:Bidu、阿里巴巴:Alibaba、騰訊:Tencent)の一角でゲーム事業のリーダーであるテンセントは、大幅な組織改革を行って、「モバイルインターネットの後半戦に挑む」(テンセント董事会主席兼CEOの馬化騰氏)という。テンセントの打ち出した新戦略の行方について中国メディアが注目している。

 中国のオンラインゲーム規制は、若年層がオンラインゲームに夢中になって長時間プレイすることによって、視力の低下の他、様々な社会問題が起こっていることを憂慮して教育部が中心になって進めている規制。未成年者の利用時間を制限する他、新規ゲームや事業者の認可を中断したり、既存ゲームの販売禁止などの措置がとられている。

 オンラインゲーム最大手のテンセントは、この規制にいち早く対応し、今年9月に人気のオンラインゲーム「王者栄耀」を対象に「健康系統」の導入を発表した。10月25日に北京市で導入した後、適用エリアを拡大しており、11月末までに全国範囲で導入を終える計画だ。

 このシステムは、新規ユーザーが最初にゲームを始める際、政府公安部門のデータベースに接続してチェックを行い、未成年かどうかを判断。未成年の場合は、プレイ時間を制限する仕組みだ。12歳以下で1時間、13~18歳未満で2時間に規制する。制限時間を超えると、プレイヤーは強制的にログアウトされる形。また、12歳以下に関しては、午後9時~翌午前8時のログインが不可となる。

 また、テンセントは「王者栄耀」に続き、すべてのゲームを対象に実名チェックと未成年規制を導入する方針を明らかにした。まずは年内に、人気のスマホゲーム9タイトルから導入。2019年には、他のスマホゲーム、PCゲームへと広げていく考えだ。

 このような自主規制を導入することは、オンラインゲーム市場の成長の足かせとなることは間違いない。現に、テンセントが8月に発表した今年4-6月期決算は、市場の事前予想を大きく下回り、過去13年間で初の減益決算になった。

 このような中で、11月1日に南京市で開催された8回目を迎える「テンセントグローバルパートナー大会」で馬化騰主席は、「モバイルインターネットの前半戦はすでに終盤を迎え、後半戦の序幕が開き始めた。デジタル化に伴って、モバイルインターネットの主戦場は、消費インターネットから産業インターネット(インダストリアル・インターネット)へと移行している」という宣言を行った。

 テンセントは、オンラインゲームを主力とする個人向けと法人向けのインターネットサービスを組み合わせた「両輪戦略」へと大胆に切り替えていく考えだ。

 まず、法人向けクラウド・スマート化サービスに特化した新事業群(CSIG=Cloud and Smart Industries Group)を新たに発足。クラウドサービスを手がける傘下の「騰訊雲」をはじめ、スマート小売、教育、医療、ネットセキュリティ、位置情報サービス(ロケーションベースサービス=LBS)などほぼすべての法人向け事業を統合させた。

 湯道生・高級執行副総裁は、「産業インターネット事業では、クラウド、人工知能(AI)、セキュリティ、LBSなどを低層インフラとして、垂直産業を深く掘り下げていく。デジタル化のアシスタントとしての役割を果たしていく」と総括している。

 一方で、プラットフォーム・コンテンツ事業群(PCG)を新設。既存のモバイルインターネット事業群(MIG)とインターネット媒体事業群(OMG)のうち、SNSやデータプラットプラットフォーム、デジタルコンテンツなどの関連性の高い事業セクターを統合した。

 テンセントが強化宣言した産業インターネット分野は、通信環境が5Gに置き換わることによって社会構造そのものを変えるほどの大きな変革をもたらす事業とされている。中国では「AI(人工知能)大国」を標榜し、AIをクラウド化する「クラウドAI」ビジネスがここ3年で勃興した。2017年に行われたAI関連企業による資金調達の額で、中国は世界全体の半分近くを占めた。

 テンセントが乗り出せば、アリババやバイドゥも対抗策を取ることは目に見えている。この3者は、自動運転分野でも火花を散らしている関係にあるが、AIやクラウドを軸に繰り広げられる産業インターネットの分野でも覇者を巡る競争を繰り広げることになるだろう。ゲーム規制に背中を押されるようなかっこうで、テンセントが一足早く動き出しているように見えるが、アリババ、バイドゥも当然、準備を進めているだろう。アリババの「アリペイ」、テンセントの「ウィチャットペイ」によって、中国の小売決済が大きく変わったような変革が産業分野でも進みそうだ。(イメージ写真提供:123RF)