中国で普及するQRコードを使ったスマートフォン決済の2巨頭である阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)のAliPay(支付宝:アリペイ)と騰訊HD(テンセント・ホールディングス)のWechatPay(微信支付:ウィチャットペイ)がアジアの国々で熾烈な陣取り合戦を繰り広げている。すでに中国国内においては、両者ともにスマートフォンの利用者数7.5億人超に迫る利用者を獲得して飽和状態となり、成長市場を求めて、中国人旅行者が大挙して押し寄せている東南アジア各国での普及を急いでいる。

 テンセント・ホールディングスがフィリピンのフィンテック企業に資本参加することがこのほど明らかになった。出資するのは、現地通信大手PLDT傘下のボイジャー・イノベーションズ(Voyager Innovations)。テンセントは米投資ファンドのKKRと共同で、最大1億7500万米ドル(約200億円)を出資する方針だ。

 PLDTによると、今回の出資額はボイジャーが過去実施した資金調達の中で最大規模になるという。出資比率は明らかにされていないが、テンセントなどの出資後もPLDTが支配権を維持する。

 ボイジャーは主に、電子マネーやデジタル決済に関連するサービスを提供する会社。フィリピンでの主な競合相手はグローブ・フィンテック・イノベーションズ(Globe Fintech Innovations)で、グローブ社にはアリババ・グループ・ホールディングが資本参加している。

 アリペイやウィチャットペイは、海外進出の第一歩として中国人旅行者が旅行する地域の店舗等へ、中国人旅行者への利便性を提供する手段として加盟店登録を進めている。日本の観光地でも急速に普及してきている。現地の店舗等にとっては、「爆買い」が期待できる中国人旅行者を店内に呼び込む手段として中国と同様の決済手段を提供することは歓迎されている。

 次に、現地の決済提供事業者と提携することによって、決済システムを提供する「アリペイ/ウィチャットペイ経済圏」のネットワークの拡大を図っている。中国人が好んで旅行しているタイでは、現地のチャロン・ポカパン(CP)系のトゥルーマネー(true)にアリババが20%出資している。インドでも現地で3億人以上が利用しているというPaytmにアリババが出資し、アリペイベースのスマホ決済サービスを提供している。インドではテンセントも現地のメッセージアプリ大手ハイクに出資し、ウィチャットペイのインド版のサービス浸透を支援している。

 最終的には、現地法人を設立し、現地の決済手段としての定着をめざしているが、これはハードルが高く、なかなか進んでいない。それぞれ現地に根差した決済ネットワークが広がりつつあるためだ。日本でも、LINEペイや楽天ペイ、ソフトバンク系のペイペイなどのサービスがスタートしている。ペイペイは、インドのPaytmのシステムを利用するので、間接的にアリババの技術を活用している。

 スマートフォン決済は、世界的に普及がはじまったばかり。米国系のアップルペイなどもあり、どこが覇権をとるかはわからない。それらが主戦場としているのは、中間所得層が急拡大しているアジア各国だ。「爆買いの中国人旅行者」が殺到しているだけに、中国系のアリペイ、ウィチャットペイには有利な市場ともいえるが、そこで、どれだけの市場シェアを獲得できるのか? 戦いは始まったばかりだ。(イメージ写真提供:123RF)