日本経営管理教育協会が見る中国 第531回 ――水野隆張

◆経済大国1位米国と2位中国が激しい貿易戦争に突入

 「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領が誕生してから、米国は底堅い経済成長を背景に輸入が増加し、貿易赤字が2017年に前年比8%増の7956億ドル(約88兆円)に達した。このうち対中国の貿易赤字は全体のほぼ半分に相当する3755億ドルとなった。

 貿易赤字の削減を目指すトランプ大統領は中国を主なターゲットにして、鉄鋼とアルミニウムに高関税を課す輸入制限を発動したが、これに対して中国も報復関税を課し、両国は激しい貿易戦争に突入した。

◆中国の報復関税の規模には限界があり、そのため関税以外の措置の可能性も?

 中国は約600億ドル(約6兆7千億円)相当の米国製品に報復追加関税を課すと発表したが、先に米国が表明していた「2千憶ドル相当の中国製品に25%」という規模には達しなかった。中国の対米輸入額は年1500億ドル規模で米国の対中輸入額(5050億ドル規模)とは開きがある。中国は、米国のように制裁対象を広げることは難しくなっているのである。そのため関税以外の措置の可能性が指摘されている。

◆中国に手詰まり感 残る手は不買運動? 米国債売却?

 最もあり得るのは米製品の不買運動である。韓国では米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備に中国が猛反発し、ロッテグループなど韓国企業への圧迫が続いた。中國メディアではこのところ米アップル社に関する批判が相次いでいるところからアップル社が標的になるのではという見方が強まっている。米国が警戒するのは米国債の大量売却や購入規模の大幅減額である。中国の米国債保有額は約1兆1800億ドルと外国勢保有高のトップを占めており、中国が大量売却すれば米経済は衝撃を受けることになる。

 しかし、人民元相場も不安定化するためこの措置は“もろ刃の剣”ということにもなる。中国が一番恐れていることは、米国が「国際緊急事態経済権限法(IEEPA)」を発動することである。同法は経済に関する種々の権限を大統領に付与することを認めるもので、対象国が保有する国債の無効化といった一方的な措置が可能になるとされている。

◆この二大経済大国貿易戦争の今後の影響は?

 米国と中国という世界の二大経済大国が貿易戦争を拡大するとなれば両国の個人消費が停滞することになり、二大経済の需要が低迷すれば、世界経済への波及は不可避となるであろう。世界的に景気が悪化すれば、輸出主導型の日本経済にも悪影響が及ぶことは必至である。

 いまのところ米中両国が矛を収める気配は見られない。今後両国の制裁措置の応酬が続けば世界中に「貿易戦争」が拡大される事態にもなりかねないことが憂慮される。(写真は、上海洋山深水港におけるコンテナ積み出し。提供:日本経営管理教育協会)