世界最大の自動車市場となった中国では、現在、ガソリン車から新エネルギー車(NEV)への切り替えが急ピッチで進んでいる。2019年にスタートする「NEV規制」では、中国で年3万台以上の乗用車を製造、輸入販売するメーカーは、すべての生産・輸入販売台数に対し、NEVの生産比率を一定水準以上確保することが義務付けられることになる。NEVの台頭は、従来のガソリン車とは異なる業界からの自動車生産を可能とし、従来の企業城下町とは異なる地域にも自動車産業の拠点作りができる。「自動車都市」の名乗りをあげる地方都市が続いていると中国メディア・経済観察報が伝えている。

 中国の自動車メーカーは、第一汽車(吉林省長春市)、東風汽車(湖北省武漢市)、上海汽車(上海市)という3大国有自動車メーカーに、長安汽車(重慶市)、奇瑞汽車(安徽省蕪湖市)を加えた5つの企業グループを「ビッグ5」といっている。「中国を代表する自動車都市」というと、このビッグ5の本社所在地に加え、日系メーカーなどが合弁で工場進出をし、“中国のデトロイト”と呼ばれる広東省の「広州」などを指している。ガソリン自動車製造には膨大な自動車部品の工場群を伴うため、大工場の立地は、すなわち工業都市の成立につながった。

 これら伝統的な自動車都市に加えて、従来は巨大な自動車メーカーがなかった都市や、産業基盤が弱いとされていた都市も、近年「自動車都市」の名乗りをあげ始めている。たとえば、河北省の「保定」、江蘇省の「常熟」、浙江省の「紹興」「台州」「寧波」、そして、湖南省の「湘潭」などだ。

 「保定」には、中国最大の民間自動車メーカーである長城汽車が本社を置き、上海に隣接する浙江省には金型メーカーをはじめ自動車部品メーカーが集積し、「台州」は金型の町として知られているなど、自動車産業と縁がないわけではないが、新たに「自動車都市」としての発展を内外に宣言している。

 また、具体的な目標は掲げていないものの、自動車産業に巨資を投じている都市として、江蘇省の「南京」、江西省の「上饒」などがあげられ、河南省の「鄭州」、四川省の「成都」、そして、「北京」なども自動車産業規模が急速に拡大している。

 競争の焦点となっているのは、国策として普及推進されているNEVだ。この分野では、南京の動きが最も活発化している。同市はNEVについて投資規模100億人民元(約1600億円)を超える大型事業を多数誘致した。市内数カ所にある経済開発区では、NEV、スマートカー、自動車部品の産業生態系がいずれも整い、区内生産額の伸びに大きく貢献している。うち、江寧区の2017年自動車生産額は1500億人民元(約2兆4400億円)を突破した。完成車の生産能力は、江蘇省全体の40%を占めている。

 ただ、地方政府がこぞって参戦するNEV誘致競争には、政策的リスクも存在する。近く施行される改正版「自動車産業投資管理規定」は、低レベルな重複投資を回避する目的で、新規の電気自動車(EV)生産事業を厳しく規制している。新規EV生産事業を認める条件として、「NEV保有比率が全国平均を下回らない」、「既存EV生産ラインの稼働率が80%を下回らない」――などを地方政府に求めている。

 来年施行のNEV規制によって、日本メーカーが相次いで中国での生産力拡大の計画を発表しているように、中国国内においてNEV誘致は次の成長を委ねる重大な関心事になっている。新たなビッグシティは、いったいどこになるのだろうか? (写真は、湖北省武漢市漢口。提供:123RF)