日本経営管理教育協会が見る中国 第523回 ――水野隆張

■投資主導の経済成長が限界に達している

 これまでの中国経済成長の最大のエンジンは投資であった。ここ10年、世界の製造業設備投資の3割は中国に集中しており、産業基盤の強化が行われ、中国は「世界の工場」として成長してきた。しかし、近年成長率が6%台に減速し投資依存の成長から離脱し、消費の拡大により持続的な経済成長を実現する成長モデルに変わろうとしている。これまでの様な過度な投資は過剰生産能力のほか、エネルギーの消耗、環境破壊などの問題にも広がり、様々な弊害をもたらしている。現実には製造業や不動産を中心に投資の伸びが大きく鈍化しており、投資主導高度成長モデルはすでに限界に達している。

■中国の消費拡大の可能性

 中国のGDPに占める民間消費の割合は主要先進国や新興国の60~70%に比べて35%と非常に少ないが、消費割合が低いということはその成長の可能性が高いということもできる。今後経済規模の増加に加え、民間消費の割合が上がれば、消費市場が一層拡大することが予想される。中国の家計消費支出を見ると、携帯電話や自動車の普及により交通・通信のウェイトが上昇するほか、生活水準の向上に伴い、娯楽・文化・教育の支出も増加している。都市化の進行や結婚に伴うマイホームの取得などにより新規需要も強く、家具、家電などの住宅関連耐久消費財の成長余力も大きいと見られている。

■労働分配率の向上と企業優遇制度の見直しが重要課題

 「投資から消費へ」の転換に於いて、最も重要なのは労働分配率の向上と企業優遇政策の見直しである。労働分配率は人件費の企業収益(付加価値)に占める比率である。人件費が低いほど、労働分配率が低くなる。中国の労働分配率の低下の原因として,農民工など大量な廉価労働力の労働市場への参入により、人件費が安く抑えられていたことが考えられる。

 近年では、農村部から都市部への労働力人口移動は徐々に細くなり、今後、賃金の大幅な上昇が避けられなくなり、労働分配率の押上圧力が高まると見られている。また、政府も企業優遇政策を是正しつつあり、預金金利の上昇と人民元高によって、国民購買力の向上ひいては消費の拡大が期待できそうである。

■中国の「投資から消費へ」の変貌は世界経済にも大きな影響を与えるだろう

 現在、中国経済の減速感が強まる中、消費の伸びも鈍化し、出店ベースも売り上げの増加も勢いを失っている。景気減速がさらに深まれば、」財政出動や投資拡大が行われ、一時的に「投資から消費へ」の転換は一時的に後退する可能性も予想される。

 更に中国の消費拡大の最大の障害は中国のパクリ体質である。ファッションブランドについても世界的有名ブランドは皆無と言っても過言ではない。知的財産権を忠実に守り中国独自の商品開発が急務とされている。中国には伝統的なデザインや優秀な刺繍技術などがあり長期的には独自の開発力に期待したいところである。しかしながら、中長期的にGDPに占める消費の割合は徐々に拡大し、経済の支えとなっていくと見られている。

 中国が「世界の工場」。から「消費の一大市場」へ変貌すれば、投資、貿易などを通じ世界経済にも大きな影響を与えるであろう。
(写真は、海南島の衣類スーパー。提供:日本経営管理教育協会)