中国の広域経済圏構想「一帯一路」が躓いている。同構想の目玉事業のひとつであったマレーシアでの鉄道建設プロジェクト「東海岸鉄道」(ECRL)の計画が7月5日に即時中止の決定がなされた。中止期間は定められていない。同事業の第1期分を契約額460億リンギット(約1兆2500億円)で受注していた中国交通建設は5日の夕刻に「計画の中止が業績に重大な影響をもたらすものではない」と発表したが、6日の同社株価は急落して動揺を示した。今年5月にマハティール・ビン・モハマド氏が首相に返り咲いた時から問題視されてきた中国関連プロジェクトの象徴といえる事業の中止は、米国との貿易摩擦問題を抱える今、中国政府にとっては泣きっ面に蜂の事態といえそうだ。

 マレーシア政府が同プロジェクトを中止した理由は、総工費が当初予算を上回る見込みとなり、財政悪化を防ぐためとしている。マハティール氏は今年5月の選挙戦でも中国との間で進んでいるプロジェクトは「国益にそぐわない」という見方を示していた。ECRLの総工費は当初550億リンギット(約1兆5050億円)と見積もられていたが、マハティール政権の最新試算によれば、中国への金利支払などを含むと810億リンギット(約2兆2100億円)に膨らむ見通しになったという。

 同プロジェクトは、首都クアラルンプールから東部沿岸都市クアンタンを経由し、タイとの国境都市トゥンパットを結ぶ路線の建設を予定。契約締結時に、中国政府はマレーシア輸出入銀行に対し、プロジェクト推進資金として550億リンギットを貸与することで合意している。2017年8月に着工し、すでに全体の10%強の建設工事が進んでいるという。

 マレーシアでは、同プロジェクトの他、中国との間で「一帯一路」関連で複数の大型プロジェクトの計画がある。これら計画に絡んで、ナジブ・ラザク前首相が背任、収賄罪容疑で逮捕されている。今回のECRLの中止に合わせて、中国企業との間で交わされたマレー半島とボルネオ島をつなぐパイプライン建設計画についても事業中止の判断が下されている。マレーシアにおける相次ぐプロジェクトの中止発表は、その他の地域での「一帯一路」プロジェクトの進行にも影響を与える懸念がある。

 マハティール首相は、8月にも訪中して首脳会談を行う姿勢を示している。中国の習近平・国家主席の肝いりで進める「一帯一路」構想の浮沈を占うような会談になりそうだ。(イメージ写真提供:123RF)