グローバルにおいてフィンテックベンチャー企業への投資額は、米国、英国、インドのスタートアップ企業への旺盛な投資にけん引され、2017年は前年比17%増の274億ドル(約3兆円)に達した。アクセンチュアが5月29日に最新調査結果を発表した。同社のテクノロジー戦略グループ日本統括 マネジング・ディレクターの村上隆文氏(写真)は、「フィンテック投資は、2016年から第3ステージである発展期に入り、テクノロジーによって社会的課題に挑戦するスタートアップが登場し、金融による社会構造変革を実現しようとしている。高齢化が進む日本は社会課題先進国といえ、一気にフィンテック関連投資が拡大する可能性がある」と見通した。

 2010年からフィンテック関連の統計を取り始めたアクセンチュアは、これまでの8年間を3つの段階に区分して整理している。2010年~12年の「黎明期」には、スタートアップ企業が金融の一部を代替するサービスを展開し、金融機関のビジネスの一部をフィンテック企業が肩代わりする時代だった。2013年~15年は、金融機関に対して価値提供を行うスタートアップが出現し、金融機関のフィンテックベンチャーへの投資も活発化し、共生によって一気に成長が加速した「勃興・転換期」に位置づけられる。

 そして、2016年以降に、金融事業の効率化や高度化だけにとどまらず、社会課題に挑戦するスタートアップが登場し、従来の金融の枠を超えて新たな市場を開拓するような「発展期」を迎えたとしている。たとえば、米国Bright Healthは、医療機関ネットワークから医療データの提供を受けることで、保険加入者に適切な医師・病院に誘導することや予防アドバイスを行うことで、医療費の抑制を実現。この抑制した医療費の還元を収益源とする新たなビジネスモデルを確立している。

 また、米国のProducePayは、生鮮農産品の生産者に対し、出荷から販売まで3カ月近いキャッシュインまでのリードタイムに対し、総作物の市場価格を試算するソフトを開発し、生産者と消費者をつなぐ商流情報を活用することで、出荷翌日に農家に対して低利で融資するサービスを提供している。このような従来の金融ビジネスの枠を超えた新しい金融事業がテクノロジーの活用によって生まれている。

 村上氏は、「周辺サービスと一体化し、業際横断的なエコシステムを作り上げること、また、社会コストの削減など社会課題解決型のフィンテックの開発によって潜在的なニーズを掘り起こすことは、日本においてこそ大きな成長チャンスがある」という。「日本にはフィンテック先進国になりえる技術的な裏付け、そして、世界第3位の経済大国としての市場規模がある。これまでフィンテックに世界水準から大きく劣る投資しかしていないのは、投資から得られるリターンが見えにくかったため。それほど、日本の金融は『足りている』状態だった。しかし、世界で最も進んだ高齢・長寿社会の日本には、社会的な課題が山積している。それらをテクノロジーの力で解決するという目標が明確になれば、これまでにない大きな投資が始まるだろう」と見通す。

 そして、代表的な課題として、旧来の社会保障制度が限界を迎えつつある「社会保障費の抑制」、2050年の労働力人口はピーク(2005年)の3分の2に縮小することからくる「労働生産性の向上」、s0して、個人金融資産約1700兆円の52%が預貯金として滞留する「個人資産の流動化」などをあげた。これらの課題に対し、産官学の連携によって課題解決に動くこと、そして、国内にとどまらず広く海外から新しい技術を呼び込む努力をすべき時に来ていると強調した。

 「東京はフィンテック先進国である米ニューヨーク、英ロンドンに増して、高密度な金融と産業の集積が進んでいる都市。イノベーションが出会いによって生まれるのであれば、大きな可能性を持った地域」として、これからの日本におけるフィンテック投資の盛り上がりを予測した。(写真は、フィンテック最新動向について解説するアクセンチュア テクノロジー戦略グループ日本統括 マネジング・ディレクターの村上隆文氏)