日本経営管理教育協会が見る中国 第515回――水野隆張

■国際情勢が急速な展開を見せている

 米朝首脳会談が2018年6月12日シンガポールで開催されることが決まり、国際情勢が急速な展開をみせている。これに関連して日中韓会談が日本で開催されることになり中国の李克強総理と韓国の文在寅大統領が来日した。

 特に李克強総理は今後の日中関係に関して次のように語っている。「今回、自分は総理就任後初めて訪日した。ここ数年、両国は風雨を経て曲がり道をたどったが、本日の歓迎式典に参加し、風雲は過ぎ去り晴れ空となった。今回の自分の公式訪問により、両国関係は正常な軌道に戻った。今後、新たな発展を得て長期にわたる安定した健全な発展を目指すべきである。両国は、世界の主要な経済体として、重要な責任を有している。40周年の機会に条約の精神を振り返り、両国関係が正常な軌道に戻ることは、両国の利益のみならず、世界の期待にも応えるものである」。

 振り返れば、日中関係は、日本政府が2012年9月に沖縄県・尖閣諸島を国有化したのを機に中国各地で反日デモが吹き荒れ、どん底の状態に陥った。あれほど険悪な関係にあった日中関係が今回の李克強総理の来日で一気に正常化するという背景には何が起こっているのであろうか???

■トランプ政権が仕掛けている深刻な対中貿易摩擦

 中国人民銀行(中央銀行)が2018年3月7日に発表した2018年2月末の外貨準備は1月末より270億ドル少ない3兆1344億ドル(約330兆円)だった。前月より減少するのは2017年1月末から1年1カ月ぶりだということである。

 中国はこれまで自国の低賃金労働を活用して輸出商品を製造して世界の工場として著しい発展を遂げてきた。しかしながら高度成長の末賃金が高騰して低付加価値の輸出商品は採算が合わなくなり、多くの製造工場が中国から近隣のアジア諸国に低賃金を求めて移転しつつある。

 本来ならばここで新商品を開発して新たな市場開拓を図るべきところだが、これまで下請け工場として新規商品開発を怠ってきたツケが回ってきたようである。そこへ米国が貿易赤字の改善ということで関税引き上げ等の貿易摩擦を厳しく仕掛けてきており、世界の二大経済大国が貿易戦争に突入することになればその影響は両国にとどまることはないであろう。

 経済成長のスピードが以前より鈍化し、米国との貿易摩擦が課題の中国にとって、日中関係の重要性は増しているのである。中国側には、対米貿易黒字を共に抱える日本と自由貿易体制を守る姿勢をアピールすることで、保護主義の主張を強めるトランプ政権を牽制する狙いがあるのであろう。また中国が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」に日本を引き込む思惑もあるようである。

■激変する国際情勢への日本の対応の遅れが心配される

 国際情勢が著しく変動を遂げている中で国会論争はもっぱら森友・加計問題で空転しており、野党の離合集散も続いていて次元の低い論議が展開されている。今後日米、日中、日韓関係をどのように進めて行けばよいのかという重要な課題が山積している中で国会論争の正常化を切に望みたいところである。(写真は、中国製造業の一場面。提供:日本経営管理教育協会)