日本経営管理教育協会が見る中国 第510回--宮本邦夫

 「葛根湯」などの漢方薬で知られるツムラが、先般、中国における新規のビジネスを展開することを明らかにした。ツムラは、これまでも中国の何か所で漢方薬の製造を手掛けているのであるが、今回の新ビジネスは、従来のような製薬会社との提携ではなく、異業種の中国平安保険グループとの間で合弁会社「平安津村」を設立して、「中国における新規ビジネスへの挑戦」するというものである。以下で、その内容を少し見てみよう。

◇なぜ保険会社との提携なのか

 提携先である中国平安保険グループは、中国の代表的な保険会社であるが、ツムラがなぜこの保険会社と提携したかと言えば、それは同グループが有している金融・ITの総合力に着目したからである。すなわち、同グループは、中国最大のインターネット医療健康管理プラットホームを有しており、1000名のオンライン自社医師、6万人を超える提携医師、5000カ所の提携病院によって1.5億人以上の登録ユーザーの医療健康管理を行っている。これと、ツムラの100年を超す社歴で積み上げてきた品質・技術・情報という強みを合わせることによって、「中国における中薬№1ブランドを目指す」というわけである。

◇戦略展開の基本的スタンス

 ツムラは「漢方のツムラ」のキャッチフレーズが良く知られているが、今回の中国における戦略展開に当たって、「“グローバル・ニッチ”TSUMURA」というキャッチフレーズを掲げている。その具体的なものとして、「中国での貢献」と「生薬の安定確保」の2つを挙げている。「中国での貢献」は、中薬産業のさらなる発展を通じて、中国国民の健康へ貢献することである。「生薬の安定確保」は、生薬の品質向上や生薬資源保護に寄与することによって、自社の生薬原剤を安定的に確保することである。この2つの基本的な視点に立って戦略・戦術を展開していくというわけである。

◇長期的な視野にたった事業戦略

 ツムラの今回の中国における新規ビジネスの展開に当たって、特筆すべきことは、長期的視野に立っていることである。ツムラは、10年後の2027年の中国での売上高を約100億元(約1700億円)と見込んでいる。同社の2017年度の売上高が約1133億円であるから、10年後には、日本での売り上げに等しいか、それ以上を見込んでいることになる。中国での事業は、当然のことながら生薬、中成薬、中薬配合顆粒の医薬品の製造・販売が中心であるが、このほか同社の強みである品質・技術・情報を活かした分析センターを2、3年後に設立して分析も事業化しようとしているのである。(写真は、東京赤坂のツムラ本社。提供:日本経営管理教育協会)