日本経営管理教育協会が見る中国 第509回--磯山隆志

■ヒップホップとは

 ヒップホップは、1970年代にアメリカのニューヨーク、サウス・ブロンクス地区で、アフリカ系アメリカ人などのコミュニティから生まれたとされるサブカルチャーである。主にラップミュージック、ダンス、アート、ファッションといった要素から構成されているといわれる。

 ヒップホップが生まれた背景には、70年代のサウス・ブロンクスに住む、黒人たちの置かれた状況があるとされる。

■ヒップホップの歴史

 70年代のサウス・ブロンクスは、貧困層の街であり、ギャングがはびこるなど治安も悪い街であった。そこに住む黒人たちは当時流行っていたディスコに行くお金がなく、公園でパーティを開いていたという。その中でかけられた音楽やラップ、ダンスがヒップホップのはじまりであるといわれる。

 1979年にはラップのレコードがリリースされ、シュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・ディライト」がヒットした。80年代に入るとランDMCの「ウォーク・ディス・ウェイ」のヒットから、ラップは音楽のジャンルとして定着していく。1989年にはグラミー賞のカテゴリーにも入るようになった。

■ヒップホップの現在

 90年代からは、ヒットチャートにラップの曲が入るのは当たり前のようになった。2017年には、アメリカでヒップホップとR&Bが、音楽の売り上げでロックを抜いて最大の音楽ジャンルとなったことが話題となった。

 アメリカの一つの地域から生まれたヒップホップは、現在ではメインストリームの文化として世界的に広がりを見せている。

■中国でヒップホップが禁止の報道

 中国でもヒップホップの人気は高まりつつあった。しかし、今年の1月、中国政府がラップ歌手をテレビやラジオに出演させない方針を示したとの報道があった。報道によれば、ヒップホップ文化は不健全で低俗であるというのが禁止の理由のようである。

 その背景には中国の一部のラップ歌手が、歌詞の中で不適切な表現をしたとして批判されたこともあると見られる。一方、ヒップホップの生まれた背景からか、反体制的な文化が浸透するのを警戒したとの見方もある。

■ヒップホップは中国で復活するか

 元々、ラップの内容はパーティに関するものから、都会の貧困層の過酷な生活を生々しく表現したものなどがある。こうした表現が体制批判につながることを懸念しているとすれば、現実にある社会問題を直視することはできるのであろうか。

 最近、国家主席の任期制限を撤廃する憲法の改正案が、全国人民代表大会で可決された。つまり、国家主席が生涯にわたり、とどまることが可能になった。批判的な声が聞こえてこない世界で、いつかヒップホップが復活する日を願うばかりである。(写真は、中国の公園では太極拳。提供:日本経営管理教育協会)