日本経営管理教育協会が見る中国 第493回--宮本邦夫

 9月の初旬に訪中した際に、驚いたのは、歩道や車道が赤色や黄色の自転車で溢れている光景であった。それは、ここ1、2年で瞬く間に広がったシェア自転車であった。今やシェア自転車の数は中国全土で1600万台を超えたと言われている。しかし、当局は、自転車が乗り捨て状態にされ、いろいろな問題が発生したため、規制の強化に乗り出しており、中には、経営破綻に追い込まれた業者もあるという。この中国のシェア自転車ビジネスから何を学ぶべきであろうか?

■スマホを利用した新しいビジネス

 シェア自転車ビジネスは、スマホを利用した新しいビジネスである。スマホによって自転車の鍵を解錠し、どこで乗り捨てても良く、料金も安いというのだから、利用者にとっての利便性は非常に大きい。ここで着目すべきことは、シェア自転車ビジネスがスマホを利用した点である。このことは、スマホの新しいアプリを開発すれば、ニュー・ビジネス・モデルを展開することができる可能性があることを示唆している。したがって、特にスマホなしでは生活できない若い人たちに対して、既成のアプリを利用するだけではなく、自ら新規アプリを開発し事業化に取り組むことを期待したい。

■デメリットにも目を向ける

 中国のシェア自転車ビジネスは、その利便性だけが強調されがちだが、参入後間もなく当局の規制が強化されたということは、いろいろな障害、問題があったからである。指摘されている障害、問題としては、自転車の車道での乗り捨てによる自動車等への交通障害、歩行者への通行障害、商店などへの営業妨害などである。新ビジネスを展開する際、メリットだけを考えて進めていくことが多いが、中国のシェア自転車ビジネスを見ると、そのデメリットを考えずに突進していったという印象が強い。このことから新ビジネスの展開に当たっては、デメリット分析の必要性、重要性を理解すべきである。

■長期的な視点からの検討

 中国のシェア自転車ビジネスから学ぶこととして、もう1つ挙げるとすれば、ニュー・ビジネス・モデルを開発する際には、長期的な視点、長期的な展望を持つことが大切であるということである。中国のシェア自転車ビジネスが参入後2年足らずで倒産する業者が出るということは、参入に当たって、長期的な視点から考えずに、儲かりそうだからという安易な発想で参入したからだと推察される。したがって、ニュー・ビジネス・モデルの開発に際しては、参入する分野のニーズの将来性、参入が予想される競業者、採算性の予測などについて、長期的な視点から分析・検討して結論を出すことである。(写真提供:北京市内の歩道。日本経営管理教育協会)