日本経営管理教育協会が見る中国 第492回--水野隆張

■超大国米国と中国の指導者が交替

 日本を取り巻く超大国、米国と中国のリーダーが交替して、両国に急激な変化が起こり始めている。これまで覇権について公には決して口にしなかった中国の指導者が「強国中国の夢」という表現で世界覇権をあからさまに口に出し始めたのである。一方の米国はこれまですべての国際問題に介入していたが、新しい指導者はアメリカ・ファーストという方針を打ち出し、TTPやパリ協定といった国際協調路線を否定してアメリカの国益第一優先という方向へと舵取りを大きく変化させている。

■鄧小平氏の遺言

 中国の鄧小平氏は亡くなる前に中国の後継者達に対して「覇権国米国に悟られないようにして、覇権国から資金と技術、科学、政治的な支援を取り付けることが当面最重要課題である」と言い遺している。そして世界銀行に対して「20年先を見据えて中国の経済について研究し、どうすれば中国が米国に追いつけるか」を助言するよう依頼して了承を得たのである。

 しかも、1949年中華人民共和国建国から100周年に当たる2049年に長期マラソンで米国を追い抜こうという戦略を打ち出しているのである。その結果、中国は日本を追い抜いて世界第二の経済大国へと成長し、軍事強化予算も年々増大して今では周辺国に睨みを利かせる大国への道を歩み始めている。

■世界のパワーバランスが激変している

 一方新しく大統領の座に就いたトランプ氏は貿易不均衡の是正やTPP・パリ協定などの国際協調路線を否定して世界の国際警察としての役割から撤退して、自国利益最優先の政策に方針を転換している。

 現在北朝鮮が米国をミサイル発射や原爆実験などの挑発を繰り返しているが、米国はこれに対応するだけの米軍派遣余裕もなく、もっぱら北朝鮮に絶大な影響力のある中国に対して貿易不均衡を棚上げする代わりに北朝鮮を締め上げるように要請を繰り返しているが中国は一見要請を受け入れるように見せて、実はあくまでも対話路線を強調している。このように世界のパワーバランスが激変する中で日本はどう対応すべきかが大きく問われている。

■国際問題に対する日本の急速な対応が望まれている

 日本としては最もやってはいけないことは"中国を過大評価"することである。中国は見たところ強大国の道を歩いているように見えるが経済的にも政治的にも様々な問題を抱えており冷静に分析して対応することが最も重要である。

 そのためには中国語に熟達し、中国の内部資料を正確に読解分析できる人材を育成強化することが求められている。そして中国の改革派との人脈育成も同時に図るべきであろう。

 一方、米国との関係では従来の米国一辺倒の関係から周辺アジア諸国との連携を強化して外交的に強国の道を歩み始めた中国に対処することが重要であると考える次第である。特に気が替わりやすいトランプ大統領に対応するには、例えば人民軍を装った中国漁民が尖閣無人島に上陸しようとした場合にすぐに米国の応援頼みではなく初戦においては日本独自で撃退できる体制を整えておくべきであろう。

 さもなければ日本の独自の領土である竹島が韓国に実効支配をされている二の舞を見ることになるであろう。そのためには憲法改正や関連法制度の整備を急ぐ必要がある。国会も「もりかけ」問題などに大きな時間を割かずに最重要外交課題の議論に集中すべきであろうと考える。(写真は、中国南端海南島を走る高速鉄道。写真提供:日本経営管理教育協会)