日本経営管理教育協会が見る中国 第479回--水野隆張

・事前通告なしのミサイル発射

 北朝鮮は2017年8月29日早朝同国西岸からミサイル一発を発射した。ミサイルは日本上空を通過し北海道襟裳岬東方の太平洋上に落下した。今回は前例にない事前通告なしに日本を飛び越える打ち方をしたことで北朝鮮をめぐる緊張は一段と高まっている。 小野寺防衛相は記者団に、「まったく日本に通告なしでこのようなミサイル発射を行うのはたいへん危険な行為。我が国に対する安全保障の上の懸念がいっそう強まった」と語っている。

・北朝鮮が米中との話し合いのテーブルに付くというシナリオ

 現状では全く先の読めない北朝鮮の挑発行為であるが、今後予想されるシナリオとしては最も可能性が高いとされるのは、北朝鮮がミサイルの発射を続けながらも、どこかのタイミングで米中と話し合いのテーブルに付くというということである。北朝鮮のミサイル発射も、米軍の原子力空母の朝鮮半島沖への派遣も、全て来るべき交渉の条件を少しでも良くするための威嚇でしかない、とする予測である。

 しかしながら北朝鮮は「核」さえ持てば国が滅ぼされることはない、という考え方に固執している以上、何が何でも核の保有を国際社会に認めさせようという考えは変えることはなく、もし交渉が行われた場合の結果としては、「北朝鮮は核開発を表向きは断念するが、秘密裏に継続していく」ということになるであろう。

・中国が北朝鮮への原油を制限し、金正恩体制が崩壊する

 次に考えられるシナリとしては、中国が北朝鮮への原油を制限し、金正恩体制が崩壊するというものである。現在、北朝鮮の外貨獲得の主要貿易品目である石炭の輸出先の90%以上が中国であり、北朝鮮の生命線である石油の輸入もほぼ100%を中国から届けられている。まさに中国の支援がなければ、北朝鮮は存続できないといっても過言ではない。

 しかしながら、原油の禁輸で、北朝鮮が万が一でも崩壊すれば、中国東北部に大量の北朝鮮難民が流入する事態になりかねない。韓国主導で朝鮮半島が統一し、在韓米軍が中国の喉元まで迫り、緩衝地帯が消滅する事態は中国としては何としても避けたいところである。さらに、トランプ政権の基盤がぐらつき、何時まで持つか分からない中、つねに中長期的な戦略を持っているように見受けられる中国としては石油禁輸という大事なカードを焦って使う必要はないということである。

・アメリカが限定的ながらも軍事行動に出るというシナリオ

 最後に考えられるのは、北朝鮮が核実験も実施し、アメリカが限定的ながらも軍事行動に出るというシナリオである。ただしこの場合は、米軍のマティス総司令官が「壮絶な結果になる」と警告しているように、米軍・韓国、そして日本でも人的な被害が出ることが予想されており、このシナリオは最終的な手段とされるだろう。

 いずれにしても時間だけがただ過ぎていく現在の状況は、北朝鮮にとっては好都合で在りできるだけ早く北朝鮮と米中が話し合いの場に就くことが、切望されるところである。

(写真は日本経営管理教育協会が提供 中国の象徴北京天安門)