日本経営管理教育協会が見る中国 第473回--三好康司
 
 2016昨年11月の本コラムにて、「アパレル生産は中国に回帰するのか?」という記事を掲載した。東南アジアで衣料品を製造すると、中国よりも店頭に届く時間が長くなるため売れ行きに合わせて機動的に商品を作りにくいことから、アパレル各社が戦略を練り直しているという内容であった。その流れはあるものの、最近複数の企業から「現在カンボジアで衣料品を製造している」、「カンボジアでの製造を検討したい」といった声を聞いた。チャイナプラスワンの受け皿としての東南アジア、その中でも今回はカンボジアを取り上げてみたい。
 
1.カンボジアの概略
 
 みなさんはカンボジアと聞くとどのようなことを連想されるであろうか。
私も、アンコール・ワット、ポル・ポト政権、内戦、地雷、貧困といったイメージしか浮かばなかった。しかし、調べてみると、直近の実質GDP成長率は7%前後、経済は高成長を遂げている。同国の輸出のうち、「衣類および付属品」が約75%を占め、輸出額は59億ドルにのぼっている。経済成長を牽引しているのが繊維産業であるといっても過言ではない。
 
2.カンボジアの繊維産業
 
 衣料品を製造するためには、大きく分けて「川上工程(糸を作る工程)」、「川中工程(生地を織る・編む、染色やプリントを行う工程)」、「川下工程(縫製工程、仕上げ工程)」の3工程が必要となる。中国では全工程が存在し、川上から一貫したものづくりが可能となっているが、カンボジアの場合、生地は中国や韓国から調達するケースがほとんどであり、「川上工程」と「川中工程」の整備が課題である。カンボジア縫製のメリットの源泉は、中国と比較した工賃差であり、ジェトロデータによると中国のワーカー工賃平均は月558米ドルであるのに対し、カンボジアは175米ドルと約30%の水準だ。最大の輸出国は米国であり30%弱のシェア、それに続くのは、イギリス、ドイツ、フランスなどの欧州向け、及びカナダ向けであり、米国・カナダ・欧州向けで衣料品全輸出額の3分の2を占めている。いわば、西欧諸国の発注により、同国の繊維産業が発展してきた状況である。
 
3.日本向け衣料品輸出の現状
 
 日本のカンボジアからの「衣類および付属品」輸入額は、約880億円であり(2016年)、中国・ベトナム・インドネシア・バングラデシュに次いで5位であるが、同年の中国からの輸入額は約1兆8,000億円であり、規模はまだ大きくはない。カンボジアに進出済みの企業オーナーから話を聞いたが、衣料品の生産効率は、中国に比べ60〜80%にとどまっており、かつマネジメント人材の採用も課題とのことだ。それでも、この6年で中国依存度を減らし、カンボジアへの発注比率を増やしており、中国偏重に対するリスク分散を図っている。
 
 「中国の次の縫製先はどこか?」、繊維業界での長年の話題である。声を聞くのは、ベトナム、タイ、インドネシア、バングラデシュ、はたまたミャンマー、ラオスと言ったところであろうか。カンボジアについても、今後の繊維業界の動向を注視してみようと思う。(写真は日本経営管理教育協会が提供)