日本経営管理教育協会が見る中国 第472回--水野隆張
 
・世界の指導者としての習近平氏の資質について
 
 「アメリカンファースト」と保護主義に傾く米国トランプ大統領は、自由貿易に疑問を呈し、パリ協定離脱も表明している。イタリアを舞台にした2017年5月の主要国首脳会議でも米国と欧州の溝は深まるばかりであった。欧州は自ら運命を切り開かざるを得ない脱・米国を模索する一方で、中国に接近する動きを見せている。 中国は最高指導部が入れ替わる5年に一度の共産党大会を2017年、今秋に控え水面下での人事の駆け引きが激しさを増している。外交で成果を上げることは自らの得点となり、秋の人事で主導権を掌握しやすくなる。G20首脳会議で習氏が狙うのは欧州との関係強化である。
 
 一帯一路の名のもとで、インフラ投資や輸入拡大などの優遇策を用意する可能性を秘めている。しかしながら、世界の指導者として本当に認められるにはまだいくつもの壁を乗り越えることが要求されている。
 
・習氏の対日強硬路線に対して批判する人が増えてきている
 
 習氏は2013年3月と6月にロシアと米国をそれぞれ訪問し、日本と対立する尖閣問題をめぐり支持と理解を求めた。オバマ大統領との会談では、習氏は一時間半にわたり尖閣問題における中国の立場を説明したが、全く相手にされなかった。 ロシアも日本寄りの態度を示したため習氏の対日路線は袋小路に入った。一連の対日政策は、観光業や日中貿易などへの悪影響をもたらし、習氏の対日強硬路線に対して批判する人が増えてきているのが現状のようである。
 
・習近平氏の反腐敗運動について
 
 習氏は共産党総書記に就任した際に「腐敗と徹底的に戦う。ハエもトラも一緒に叩く」と言明したが、習政権発足以来、副閣僚や局長クラスの幹部を数十人摘発しただけにとどまっている。前任者の胡錦濤時代とくらべて、摘発人数がとくに多いわけではなく、肝心の大物は皆無だったのである。党内における求心力が弱い習氏は、結局のところ、実力者には手を出せないとの見方が有力のようだ。
 
・欧州の対中接近はあくまで米国への牽制であり、中国を本当の自由貿易国とは認めてない
 
 人民元は2015年末に国際通貨基金(IMF)が通貨危機に備えて加盟国に配るSDR(特別引き出し権)への採用が決まり、国際通貨のお墨付きを得た。ところが16年以降、資本流失を食い止めようと大口の海外送金や両替を制限し、人民元も相場の変動幅を無理やり狭める制度に改めた。自由化に逆行し、グローバル化の核心であるカネの流れをセキ止める結果となったのである。
 
 温暖化対策でも、中国が約束した国内総生産(GDP)比での排出量の削減に対しては先進国のような排出総量の削減にはあくまでも慎重な姿勢を示している。
 
 このような状況の中国に対して欧州連合(EU)は昨年12月、中国を世界貿易機構(WTO)協定上の「市場経済国」と認定するのを見送った。過剰生産のはけ口として安い鋼材を大量輸出する中国に反ダンピング(不当廉売)関税などの措置をとりにくくするためである。欧州の対中接近はあくまで米国への牽制であり、中国を本当の自由貿易国とはみなしていないと言うことである。
 
・習氏の内政と外交のやり方に不満の声が上がっている
 
 いま、習氏の内政と外交の一連のやり方に対して、すでに党内から不満の声があがっているようである。このような状況が続くと、習氏をひきずり下ろそうとする動きが出てくる可能性もあるだろう。そうなれば、党内権力闘争は一気に過熱するだろう。
 
 共産党内部情報では「改革は指導者の中で、汪洋副首相は、政治手腕は習氏より数段上なので、将来的に鄧小平のような存在になるかもしれない」ともいわれているようだ。今秋の5年に一度の共産党大会までの指導部争いから目が離せないところである。(写真は日本経営管理教育協会が提供。習近平氏就任当時の天安門広場)