日本経営管理教育協会が見る中国 第470回--水野隆張
 
・米国は、北朝鮮問題で中国に対して強く協力を要請
 
 米国は、自国の軍事的圧力だけで、北朝鮮に核兵器・弾道ミサイル開発を放棄させることは難しいと考えている。特に、2017年4月に行われた米中首脳会談以降、中国に対して強く協力を要請してきた。しかしながら、中国は、米国の軍事力行使を含む全ての方策を支持しているわけではない。中国にとって、北朝鮮が米国との間の緩衝地帯であることの重要性は変わってはいないのである。その他にも中国が北朝鮮を止められない理由がある。
 
・中国は北朝鮮の軍事的暴発を警戒
 
 中国は、北朝鮮に対する制裁強化によって経済情勢が悪化し、社会不安が増大し、核弾頭及び弾道ミサイル開発の資金が枯渇し、部隊を動かす燃料さえもが不足して、追い詰められた挙げ句、北朝鮮が自暴自棄になって軍事的に暴発することを恐れているのである。
 
・中国、ロシアの関係は不信感が充満している
 
 また、中国が強い経済制裁を加えれば、北朝鮮はロシアに救いを求めてすり寄ってきた。中国は、極東でロシアが影響力を増すことを警戒している。中ロ関係には不信感が充満しており、お互いに、自国が安全保障のために重要だと考えている地域で相手の影響力が高まることを警戒しているのである。
 
・地方政府と北朝鮮の経済関係
 
 さらに、地方政府が北朝鮮との貿易などで利益を上げていることである。遼寧省は、2016年の経済成長率がマイナスになった。北朝鮮に対する経済制裁が、遼寧省の経済にマイナスの影響を与えたということである。以上のような理由で中国は北朝鮮に対して強い経済規制を掛けられないと言うことが考えられるのである。
 
・秋の中国共産党第19回全国代表大会(19大)を控えて
 
 習近平総書記は、秋の中国共産党第19回全国代表大会(19大)を控えて、地方の反発を買いたくはないと思っているだろう。習近平総書記にとって、現在は、国内政治権力闘争の真っ最中なのである。それでも、中国は北朝鮮との貿易の最前線として知られる遼寧省丹東市のトップを更迭している。中国は、このように北朝鮮国内が暴発しない程度、米国とロシアの思惑、国際際関係と国内政治、それら相互間のバランスを取ろうとしているだけのように思われる。
 
・中朝友好協力相互援助条約の存在
 
 一方、中国は現実主義者であり、米軍の軍事力行使があることも想定しているであろう。しかし、中国は現段階で米国と軍事衝突しても勝ち目はないことも理解している。中国は、米国が北朝鮮に軍事力を行使した場合、この戦争に巻き込まれたくないと考えるだろう。しかしながら、中朝友好協力相互援助条約には、「参戦条項」があり。「一方の国が戦争に陥った場合、他方の国は全力で軍事援助を与える」という第2条の規定がある。
 しかし、中国は、同第1条の「両国は世界平和を守るためあらゆる努力を払う」という規定を盾に取り。「北朝鮮の核開発はこれに違反している」ので、中国は援助義務はないと主張するであろう。
 
・米中大国の思惑違いで対北朝鮮問題は手詰まりに
 
 米国トランプ政権が「アメリカンファースト」と自国の利益を最優先しているように、中国も中国が発展し強者となって国際社会の支配国家グループの仲間入りをして、中国にとって経済的に有利である「自由」な国際秩序を構築することを最重要視しており、このように大国米中の思惑違いによって、北朝鮮問題は早急には解決しそうもない状況にあるように思われる。
 
(手前が監視塔のある中国、鉄橋の先左がロシア、右が北朝鮮。日本経営管理教育協会が提供)