日本経営管理教育協会が見る中国 第469回--大森啓司
 
・再流行「一帯一路」を視る
 
 最近、中国で大流行している新語が「一帯一路」である。中国通の方であれば、殆どの方がご存じであると思われるが、念の為に。
 
 「一帯一路」とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「陸上シルクロード」に倣えた経済ベルト(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ「海上シルクロード」(一路)の二つの線(陸と海)で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想である。著者から見ると夢のような構想だが、どうやら中国は本気で取り組んでいるようである。今日はこの一帯一路についての背景と考察について論じてみたい。
 
・具体的な目標を高速鉄道に置いた中国
  
 「一帯一路」の発起人はもちろん習近平・国家主席である。中国はこれで「経済外交」のリーダーを狙っていくようだ。中国の成長を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいであろう。しかし一方では、過剰投資に悩む国内産業の衰退、それに伴う対外投資の拡大、外貨準備に向けた多角化といった中国自身の経済的な対策もあると考えられる。
 
 その具体的な目標に設定したのが高速鉄道。日本もインドネシアとの競争に負け、アフリカのエチオピアでは中国資本による鉄道が開通するなど、世界での営業活動に力を入れている。中国の高速鉄道は日本の新幹線の技術を基本にしているようだが、中国独自の国産技術に自信をもち大々的に輸出していく構えだ。
 
 具体的には、(1)中国東北部からロシアを経由して欧州と結ぶ欧州アジア鉄道 (2)新疆から中央アジア諸国を横断してトルコにつながる中央アジア線 (3)中国南西部からインドシナ半島を縦貫する3つの高速鉄道建設計画が策定されている。特に、(2)は2014年に甘粛省蘭州から新疆ウイグル自治区ウルムチまで高速鉄道(通称シルクロード新幹線)が開通したのが最も印象的な事ではないだろうか?
 
・投資対効果が見えにくい構想
 
 ただ、気になるのは、投資対効果である。これだけの構想には多大は投資が必要である。はたして本当にリターンが期待できるのだろうか?そうでなくても、投資は中途半端ではないはずだ。 陸路・海路の両面から帯路を建設するほどのニーズがこのアジア圏の中にあるとは思えない。
中国主導のアジアインフラ銀行にもある「シルクロードファンド」今後の動向を見守っていきたい。(写真は、中国の新幹線「和諧号」。日本経営管理教育協会が提供)