日本経営管理教育協会が見る中国 第467回--宮本邦夫
 
 日本経済新聞は5月22日号で「走り出す起業家4億人」という見出しで、世界で起業する人が増えている実情を伝えている。この記事の中で、驚いたのは中国の起業家が多いということである。その数は、1億2000万人で全人口の9%であるという。因みに、日本は、350万人(人口比3%)であるから、中国は実に比率で3倍ということになる。中国では、なぜこのように起業家になろうとする人が多いのか、その理由を探ってみることにしたい。
 
◇「大衆の創業、万人の革新」という政府の大方針
 第一の理由は、李克強首相が打ち出した「大衆の創業、万人の革新」という大方針が挙げられる。中国は、政治的には共産主義、経済的には自由主義を標榜しているが、経済活動の多くは、政府主導で行われることが多い。李首相が、このような大方針を打ち出したということは、中国の人にとっては、創業・起業は、政府のお墨付きということで、起業しやすい雰囲気になることは間違いない。実際、中国経済は以前に比べて低迷状態にあり、内需拡大の政策を採ってはいるが、不動産バブルが懸念されるなどマイナス面が現れ、他の経済対策を模索しており、「大衆の創業、万人の革新」による経済活性化に大いに期待が寄せられていると言える。
 
◇第4次産業革命という大変革期
 中国に起業家が多い第二の理由は、第4次産業革命が指摘される。これは、ドイツに始まった考え方であるが、すべてのものをインターネットと結び付けて情報を収集し分析することによって新しい価値を生み出していくとう仕組みのことで、「IoT(Internet of Thing)」 という概念で説明されることが多い。「IoT」は、コンピューターのハードウエアの高性能化、低価格化とAI(人工知能)を含めたソフトウエアの進化がもたらしたもので、その可能性は計り知れないと言われている。こうした新しい分野は、起業家にとっては、絶好のビジネスチャンスである。
 
◇最新知識・技術の習得者の増加
 第三の理由は、最新知識・技術の習得者の増加を挙げることができる。中国では、大学・大学院への進学率が高くなり、高学歴者が多くなってきた。また、米国などの先進国に留学する人も増えた。こうした最新知識・技術を習得した若者の多くは、希望する役所、会社などの組織に就職することができなくなっている。このため、最新の高度な知識・技術を持った若者の起業が増えてきたというわけである。このような若者は、起業に必要な資金を持っていないことが普通であるが、最近では、将来性のある起業家に投資するファンドが増加しており、今後もチャイニーズ・ドリームを追う人は絶えないだろう。(執筆者:日本経営管理教育協会・宮本邦夫氏)(写真は、北京大学正門。日本経営管理教育協会が提供)
日本経済新聞は5月22日号で「走り出す起業家4億人」という見出しで、世界で起業する人が増えている実情を伝えている。この記事の中で、驚いたのは中国の起業家が多いということである。その数は、1億2000万人で全人口の9%であるという。(写真は、北京大学正門。日本経営管理教育協会が提供)