日本経営管理教育協会が見る中国 第463回--水野隆張

■韓国新大統領に対する日米中の祝意表明の仕方の違い

 北朝鮮と融和政策を打ち出している民主党の文在寅新大統領が若者の圧倒的支持を集めて当選した。これに対して日米中の祝意を表明する方法は異なっていた。中国の習近平国家主席は直ちに祝電を打ったが、米ホワイトハウスは短い声明を発表するも、トランプ大統領はコメントはせず、安倍晋三首相は声明を発表したものの、日米とも祝電は打たなかった。

 文在寅新大統領は就任後初めて習近平国家主席と電話会談を行った。中国は米新型ミサイルTHAAD(サード)韓国配備に強く反発しており、韓国新政府は中国の懸念を重視し、両国関係の安定した発展を促進していくことを望んでいると中国に伝えたと言われている。

 中国国防部は韓国大統領選の当日、渤海海域で新型弾道ミサイル実験を実施したといわれており、これは、韓国大統領への警告が含まれているとみられている。

■文在寅新大統領が最初にやらなければならないこと

 文在寅新大統領がまず最初にやらなければならないことは停滞する韓国経済の立て直しであろう。韓国マスコミも「大統領就任後に経済の苦境を脱するプランが打ち出せなければ、国民の不満はより鬱積することになる」と指摘している。日韓関係については「慰安婦問題の見直し」を掲げているが日本政府は断固として拒否する構えであり、経済の立て直しには日韓経済協力は避けられないところから新大統領の手腕が問われるところである。

 また、最大の貿易パートナーである米国が保護主義に走っている厳しい状況の中で、トランプ大統領はTHAAD配備の費用負担を求め、自由貿易の破棄を示唆するなど同大統領の言動には憂慮の声が出ているが、韓国は経済面でも安全保障面でも米国に依存せざるをえず、トランプ大統領とうまくつきあっていくことも重要課題の一つといわれている。

■米中にとって“緩衝地帯”としての北朝鮮は価値がある

 中国は6カ国協議の復活を提唱しているが北朝鮮は各国から”袋叩き”にされることを恐れ、飽くまでも米国との2国間直接対話に大いに意欲を持っているということである。超大国、米国が相手の2国間対話なら大歓迎というのである。米中両国にとっても北朝鮮が滅びて、韓国に吸収されると困るということである。

 中国にとっては、“緩衝地帯”としての北朝鮮は価値があるのであって、中国にとっては隣の国は小さいほうがいいのである。

 米国にとっても同様に、北朝鮮の脅威が、在韓米軍、在日米軍の存在価値を高めているのである。そこで米国も「金暗殺」などの体制崩壊は目指さず、「非核化」実現を最優先する方針を示している。米中連携による「瀬戸際圧力」に対して、北朝鮮も外交委員会を19年ぶりに復活させるなど対話に向けた方策を模索し始めている。

 一方、トランプ政権も、経済制裁の強化や外交攻勢で北朝鮮への圧力を強め、核ミサイル開発放棄に向けて「対話の道に連れ戻す」との基本方針を議会に説明している。現状では両国とも、硬軟両様で相手を探りながら妥協へ向けて駆け引きを行っており、願わくば多くの犠牲を伴わない形での妥結が望まれるところである。(執筆者:日本経営管理教育協会・水野隆張氏)(写真は、38度線にあった北朝鮮との国境模型図。日本経営管理教育協会が提供)