(49)“他们已经来革过了!”

 尼僧から「知らないのかい、やつらはやってきてもうカクメイしていったんだよ!」と言われて阿Qは、ますます不審に思って尋ねる。

 “谁?……”(誰が?……)
 “那秀才和洋鬼子!”(あの秀才と毛唐がさ!)

 あまりの意外さに、阿Qは思わず驚きなすすべを知らなかった。尼さんは阿Qの鋭気がくじけたのを見ると、すばやく門を閉じてしまった。阿Qはもう一度押してみたが、門はビクともしない。もう一度叩いてみたが、返事はなかった。

(50)“那还是上午的事”

 それは、まだ午前中のことだった。早耳の趙秀才は、革命党がすでに前夜のうちに城下に入ったと聞くと、辮髪を頭の上へ巻き上げ、夜が明けると、これまで仲の悪かった銭毛唐を訪問した。

 这是“咸与维新”的时候了,所以他们便谈得很投机,立刻成了情投意合的同志,也相约去革命。(いまや「咸(みな)与(とも)に維(こ)れ新(あら)たなり」の時とあって、彼らはじつによく話が合い、たちまち同志として意気投合し、革命しに出かける約束をした。)

 “咸与维新”は『書経』胤征(いんせい)篇に「舊染汚俗,咸與惟新」(旧染の汚俗は、咸(みな)与(とも)に惟(こ)れ新(あらた)にせん)とあるのによる。長く悪習に染まっていた者たちは、みな共に新しく生まれ変わらせよう、の意。革命される側の人物である秀才と毛唐が野合して革命する側に回ったことを皮肉っているのである。

(51)“龙牌已经碎在地上了”

 秀才と毛唐は考えに考えたあげく、静修庵に「皇帝万歳万万歳」と書いた竜牌(四辺に竜の装飾を刻した木製の額)があることを思い出し、これはただちにカクメイしてしまわなければと、すぐさま庵へ駆けつけた。

 因为老尼姑来阻挡,说了三句话,他们便将伊当作满政府,在头上很给了不少的棍子和栗凿。(ところが、年とった尼さんが邪魔して、なんだかだと文句を言ったので、彼らは彼女を満洲政府と見なして、その頭にしたたか棍棒とげんこつをくらわした。)

 二人が帰ったあと尼さんが、気を落ち着けて調べてみると、竜牌はむろん砕けて地面に落ちていたが、そのうえ、観音像の前にあった宣徳ものの銅製の香炉もなくなっていた。

(52)“难道他们还没有知道……”

 これらの事を後になって知った阿Qは、自分が寝過ごしたのを後悔したが、また彼らが自分を誘いに来てくれなかったことをも怨んだ。

 だが、また一歩退いてこうも考えた。

 “难道他们还没有知道我已经投降了革命党么?”(やつらはおれがもう革命党の仲間に入ったことを知らないのかな?)

 未荘(ウェイチュアン)の人心は日ましに落ち着いていった。うわさによると、革命党は城下に入ったが、格別大きな変化はないとのことであった。知事閣下は官名は変わったものの元のまま、挙人旦那も何とかいう官についたし、軍隊を指揮しているのもこれまでどおりの隊長であるという。(執筆者:上野惠司)(イメージ写真提供:123RF)